信州上田漫ろ歩き

別所線上田駅

別所線上田駅

上田映劇

上田映劇

 

信州上田での生活も一年になりました。そこで今回は、この一年を振り返って、信州上田の良いところをいくつかご紹介したいと思います。 

最初に紹介させていただくのは、上田電鉄別所線です。上田駅から別所温泉までの11.6kmを走っている電車で、「丸窓電車」でおなじみの方もいらっしゃることと思います。このコラムでも、何度か写真を掲載しています。もともとは別所温泉への旅行客のためのものでしたが、現在は、沿線にある長野大学の学生さんも利用しています。その昔、映画「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」で寅さんやさくらが乗っていましたし、最近では、「サマーウォーズ」にも登場しました。 

上田駅を電車が発車する時には、映画「サマーウォーズ」の主題歌、山下達郎の「僕らの夏の夢」が流れます。達郎ファンの私には、これだけでも十分うれしいのですが、別所線でのひと時は、ほんとうに贅沢な時間です。時間がゆっくり流れていくのが体感できるような、そんなひと時を過ごすことができます。都会暮らしに疲れた時や、一人旅にはおススメです。生島足島神社のある下之郷駅を過ぎると、信州の鎌倉、塩田です。塩田町駅からは、無言館や前山寺などを回るシャトルバスが出ています。無言館には、戦没画学生の遺作が展示されています。中野駅から舞田駅あたりでは、塩田平や里山の景色が一望できます。先日も、別所温泉のお客様でしょうか、車窓からの風景をカメラに収めていました。終点の別所温泉駅では、昭和レトロな駅舎が迎えてくれます。 

次にご紹介したいのは、上田の市街地にある「上田映劇」です。上田駅から駅前の通りをまっすぐのぼり、海野町の手前の路地を入って少し行ったところにあります。「上田映劇」は、映画「青天の霹靂」のロケが行われた所です。「上田映劇」では、ロケが行われた浅草「雷門ホール」の姿を残しています。「青天の霹靂」に主演した大泉洋さんは、テレビやラジオで信州上田を絶賛しています。You Tubeでは、「大泉洋 上田」で検索することができます。 

信州上田は、映画のロケ地としても有名なところで、先ほど紹介した「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」や「サマーウォーズ」をはじめ、「博士の愛した数式」や中居正広さんが主演した「私は貝になりたい」など、今までに150本もの映画のロケが行われたそうです。)また、今年で18回になる「うえだ城下町映画祭」がこの1129()30()に行われます。「青天の霹靂」の監督で、出演もされた劇団ひとりさんがゲストとして来るそうです。 

昨年、上田に移って間もない頃、武石の新そば祭りに行きました。山あいにも関わらず、たくさんの人が集まっていました。武石で採れたそば粉で打った新そばは、それはおいしくて、一時間近く並んだかいがありました。戸隠そばや善光寺そばは全国的にも有名ですが、上田のそばもほんとうにおいしいですよ。池波正太郎さんが愛した「刀屋」や、もりが多い「草笛」など、お昼時は、まず行列を覚悟する必要があります。個人的には、青木線沿いの「車屋」の、かき揚げが乗ったざるそばがおすすめです。今年も武石はもちろん、信州の各地で新そばまつりが行われます。なお、今年の武石のそば祭りは、1115()16()の両日に開催されるそうです。 

その他にも、信州上田で行われる様々なお祭りや風情あふれる柳町通りをはじめ、八千穂高原の日本一の白樺原生林やつけば小屋でのアユ料理など、信州上田でのこの一年には、すばらしい出会いが沢山ありました。生まれも育ちも信州の私ですが、しばらくぶりの信州は新鮮です。ちょうど、東京銀座に長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」がオープンしましたが、これを機会に多くの人が、長野県そして信州上田の魅力を共有していただければと思います。私も、この一年の出会いに感謝しながら、また新しい出会いを楽しみにしたいと思っています。

 

) 「信州上田フィルムコミッション」のホームページ(http://www.ueda-cb.gr.jp/fc/)より

 

考える力とITツール

真田幸村公出陣ねぶた

真田幸村公出陣ねぶた

真田幸村公出陣ねぶた

真田幸村公出陣ねぶた

 

近年のITツールの進化には、目覚ましいものがあります。身近なところではスマートフォンがそうですし、インターネット、クラウドなどのネットワーク環境もずいぶんと便利になりました。このコラムで取り上げてきた「考える力」も、こうしたITツールと組み合わせることによって、さらに強めることができるのです。 

スマートフォンには、カメラと連動した便利なアプリが数多く出回っています。スーパーなどでもらってきたレシートの写真を撮るだけで家計簿が作れるアプリなど、一昔前のコンピュータでは、とてもそんな芸当はできませんでした。WordExcelのテンプレートも、小規模なビジネスではそのまま使えそうなものもあります。また、PowerPointSmartArtグラフィックには、階層、手順やマトリクスなどの構造を表現するための様々な図形が用意されています。これらは、プレゼングラフを作る際にとても便利なものですが、私たちがものごとを考える際のフレームワークとしても使うことができます。また、インターネットは、巨大な知識・情報バンクとして、私たちが考えを進める際に活用できることは言うまでもありません。

 これらはほんの一例ですが、ITツールを使いこなすことで、私たちの「考える力」や知的生産性は格段に伸ばすことができるのです。もちろん、そのための基盤が私たちの「考える力」であることはいうまでもありません。

 ところが、スマホ中毒やゲーム依存、メールでの言葉の乱れなど、悪い影響が出ている面もあります。残念なことです。スマートフォンを使うことで、かえって大切なものを見失い、ものごとを考えなくなってしまうとしたら、それこそ本末転倒です。知識や情報を手に入れると、それだけでなにか賢くなったような気持ちになってしまいますが、それらを自分なりに消化して初めて、自分の視野を広げ、知恵や価値を生み出すことができるのです。ITツールの進化は、知識や情報の入手を容易にする一方で、そうした誤解や混乱を助長しているのかもしれません。ITツールは道具であって、それらを使いこなすのはあくまでも私たちなのです。

 AppleSteve Jobs氏は、生前、社内でプレゼンテーションツールの使用を禁止していたと聞いたことがあります。プレゼンテーションツールを使うことで、かえって知的生産性が落ちる、というのがその理由だそうです。プレゼンテーションツールが商売道具である私にはたいへん耳の痛い話ですが、彼のシンプルな美意識がそうさせたのかもしれません。彼のプレゼンが卓越していたことはたいへん有名です。彼のプレゼンは、あくまでも商品を前面に出したシンプルなものでした。商品のすばらしさとそこに凝縮されたアイディアを、実際に商品を手に取りながら直接カスタマーに伝える。そのプレゼンが生み出す効果は絶大でした。

 便利なITツールを手に入れた今こそ、そうした道具を使いこなして、私たちの「考える力」や知的生産性を向上させる、またと無いチャンスなのかもしれません。

 

リーダーの贈り物

八千穂高原(白樺群生地)

八千穂高原(白樺群生地)

八千穂高原(白駒の池)

八千穂高原(白駒の池)

 

前回まで、「考えること」や「考える力」の伸ばし方について取り上げてきました。日々様々な難題や矛盾と向き合っている職場のリーダーやプロジェクトリーダー(以下リーダーと呼びます)の皆さんにとっては、「考える力」を求められる場面も多いことでしょう。そこで、今回は、リーダーの「考える力」について考えてみたいと思います。 

以前、「気づきのヒント」でもお話ししましたが、トラブルに陥ったITプロジェクトの立て直しに取り組んでいたことがあります。今のように、プロジェクト管理もあまり行われてはいませんでしたので、問題プロジェクトを立て直すためには、まず自分の五感をたよりに、問題を見つけることから始める必要がありました。ところが、そんなプロジェクトに限って、「問題ない症候群」が蔓延しているものです。誰に聞いても、問題はない、心配ない、の一点張り。問題に気が付いていても、誰もその事実を教えてはくれません。そもそも、全くの部外者である私が、このプロジェクトを立て直せるわけがない、と思われていたのかもしれません。 

私の思いは、どんなことがあっても、お客様に迷惑をかけてはいけない、ということでした。このプロジェクトでは、品質の確保はもちろん、納期を守ることが絶対条件でしたので、なおさらでした。納期を守るためには何を行うべきか、何から手をつけてよいか、頭の中は真っ白になっていましたが、必死に考えました。そして、自分は、このプロジェクトのためにできることは何でもやろう、メンバーがかかえている問題を解決するために知恵を出そう、汗をかこうと決めたのです。 

そんな時に、ひとりのメンバーが重い口を開いて、「実は・・・」と話し始めてくれたのです。そのことが、プロジェクトがかかえている問題を見出す糸口になりました。プロジェクトのメンバーも、口には出さなくても「このままでは、このプロジェクトはいったいどうなってしまうのか」という漠然とした不安を抱えていたのでしょう。

 プロジェクトの問題は数えきれないほどありましたが、問題が見えてくれば、あとはひとつひとつ潰していくだけです。問題を潰したことで、隠れていた問題が見つかり、プロジェクトは修羅場の様でしたが、なんとか納期通りに収めることができました。技術的に困難な課題もありましたが、メンバーが最後まであきらめずに持てる力を発揮してくれたことが、プロジェクトの再建につながったのだと思います。納期近くになって、ひょっとしたら間に合うかもしれないと思った時のメンバーの顔つきの変化、空気の変化は、私にとってとても大きく感じられたものです。

 その当時、ITプロジェクトの成功は、プロジェクトの難易度や要員のスキルなどによって決まるものと言われていました。ところが、あるコラムで、「プロジェクトを成功に導くリーダーは、どんなプロジェクトでも成功に導くことができる」という一文を目にしたことがあります。また、そのために、「成功するプロジェクトリーダーは、失敗するリーダーの10倍考えている」というのです。そんな、スーパーマンのようなリーダーが本当にいるのだろうか、とその当時はいぶかしく思ったものです。

 今になって思えば、このコラムは間違っていないと思っています。リーダーの「考える力」がプロジェクトを成功に導くのです。では、成功するリーダーは、何を考えているのでしょうか。状況に応じて、しなやかに考えているのです。「当面、いつまでに何を目指すか」、「このプロジェクトで、足りていないものは何か?」、「チーム内のコミュニケーションはうまくいっているか?」、「メンバーが持っている力や知恵を生かすことを邪魔しているものはないか?」など、プロジェクトの状況に応じて、考えること、自問自答することには限りがないはずです。

 プロジェクトが成功するためには、リーダーの掛け声やスローガンだけでは何の役にも立ちません。メンバーの具体的な働きや知恵が必要なのです。目の前のできごとの裏側にあるものや問題点に気づき、言葉にならない声を聞くことで、メンバーの思いを知り、メンバーの知恵や力を結集することができるのです。そんなプロジェクトでは、メンバーにやらされ感は生まれてきませんし、メンバーはきっとこう言うでしょう。「このプロジェクトは自分達が成し遂げた」と。

 メンバーの皆さんに達成感というプレゼントを贈ることが、リーダーの最高の喜びなのではないでしょうか。そのためにも、リーダーは日頃から「考える力」を養い、地力をつけておくことが大切だと思うのです。

 

 

考えるくせを知る

水田を走る別所線

水田を走る別所線

 

誰でも、ものごとを考える際には、いろいろな傾向やくせを持っているものです。考えるくせには、自分の考えを広げ、育てるものもあれば、その反対に、考えることを阻害してしまうものもあります。今回は、この考えるくせについて考えてみたいと思います。 

考えるという行為は、その人の感情や思いなどの影響を受けやすいものです。どれだけ客観的な立場で考えようとしても、その人が持っている価値観や信念、今までに経験したことなど、様々なことが無意識のうちに影響を及ぼしているのです。普段は、こうしたくせに気づくことはありませんが、自問自答を繰り返して考えを深めていくと、自分が持っている考えるくせに気づかされることがあります。もし自分の考えるくせが望ましくないものであったとしても、そうしたくせは、長い間の積み重ねによって身に付いてきたものですから、簡単に変えることはできません。まずは、自分の考えるくせを知ることが大切なのです。 

自分の考えるくせについて知ることは、私たちに考える力を伸ばすためのヒントを与えてくれます。もし、あなたの望ましくないくせに気づいたら、まずは、それらをありのままに認め、その上で、自分の考えるくせを補うことを考えてみましょう。

例えば、ものごとをネガティブに考える傾向が強い人は、ポジティブに、前向きに考えることを意識的に行うことで、ものごとの別の側面に気づくことができるかもしれません。もちろん、ネガティブに考えることはそれ自体悪いことではありませんし、ものごとを慎重に考えるという良い面もあります。ネガティブに考えることを否定するのではなく、ポジティブに考えることを自分のレパートリーに加えてみるのです。そうすることで、ネガティブであるという短所も長所に変えることができるのです。

また、主観的な考えに固執しがちな人は、周りの人の意見にもっと耳を傾け、相手の立場で考えることを心がけてみましょう。きっと、新しい発見や気づきがあるはずです。さらに、自分の意思や思いを強く持つことを、あなたの強みにできるかもしれません。

ものごとを表面的に捉えてしまう人は、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。一歩踏み込むことで、分かったつもりでいたことが実は理解できていなかったことが分かり、ものごとをより深く理解することができるのです。 

このように、自分の考えるくせを知り、それらを補うことによって、より柔軟な考えやより広い視野を手にいれることができるのです。そうした努力を続けていくことで、自分が克服したいと思っている考えるくせを、有意義なものの見方や考え方に変えていくことができるのではないでしようか。 

前回、考える力を伸ばすためには、何よりも自分の力で良く考える事ことが大切である、とお話ししました。努力してこそ、身に付けることができるというと、なにか当たり前のことを言っているようですが、このことは、何人も逃れることはできないのです。成功者と言われる人たちも、その例外ではありません。成功者というと、能力や幸運にめぐまれていて、初めから成功を約束されているように思われがちですが、成功者にも不遇な時期があり、たくさんの失敗や修羅場を経験しているのです。逆境の中にあっても、信念をあきらめずに考えつづけ、行動したのです。いや、むしろそうした失敗や修羅場が彼らの感性を磨き、考える力を鍛えたのかもしれません。パナソニック(旧松下電器産業)の松下幸之助氏やホンダの本田宗一郎氏、京セラやKDDIを率いる稲盛和夫氏など、日本の著名な経営者が独自の哲学を生み出したことからも、そうしたことが垣間見えてきます。 

ビジネスで起こる問題には、正解はありません。正しいか間違っているかではなく、どれだけ考えたか、考え抜いているかが問われるのです。私も、そうした場面をたくさん経験しました。考えること、さらにもう一歩踏み込んで考え続けることによって、私たちは答えに近づくことができるのです。自分の考えるくせを知ることで、自分の考えがおかしな方向に迷い込むことを防ぎ、考えを一歩一歩深め、答えに近づいていくことができるのです。

 

考える力の伸ばし方

真田十勇士

真田まつり(真田十勇士)

 

回、考えることの大切さについてお話ししました。考える力は、ヒューマンスキル共通の基盤になるもので、円滑なコミュニケーションを実現したり、様々な問題の解決策を見出したりする際に、とても役に立つものです。今回は、そんな考える力を実践的に身につけ、伸ばすことについて考えてみましょう。 

前回もお話ししましたが、考えることは意識して行っているかどうかは別として、誰でも日々行っていることなのです。でも、いざ改めて自分の考えをまとめようとすると、なかなか思うようにはいかないものです。そんな経験をお持ちの方はたくさんいらっしゃることでしょう。 

考える力を伸ばすためには、日頃から良く考えることにつきます。知識を増やせば、考える力も自ずと伸びていくもの、と思われがちですが、どうも知識を増やすことと、考える力を伸ばすことは違うもののようです。知識を増やすだけでは、考える力は身につかないのです。考える力を伸ばすためには、考えるための練習が必要です。じっくり考えることの積み重ねが、考える力を伸ばしていくのです。 

企業において、社員の考える力を伸ばす機会を作っている例があります。ホンダでは、「ワイガヤ」と呼ばれる泊り込み合宿があるそうですが、そこでは、三日三晩、徹底的な議論が行われるのだそうです。そこでは、新入りの技術者も、「で、あなたはどう思う?」と繰り返し問われ、自分の頭で考えることを訓練されるのだそうです。もちろん、生半可な意見や借り物の考えは通用しません。三日三晩、ほとんど議論漬けなので、三日目ともなると、形式的で通り一遍の議論はなくなり、本音がぶつかり合い、本質にせまる議論になるのだそうです。このように、一見回り道とも思える取り組みが、ホンダの企業文化を支えているのかもしれません。詳しくは、ホンダでエアバックの商品化に携わられた小林三郎氏の参考文献をご覧頂ければと思います。 

もし、あなたの職場に、このような議論や考える訓練の場があれば言うことはありません。また、あなたのまわりの厳しい上司や先輩もこうした訓練の場を提供してくれている、と考えてみたらどうでしょう。いずれにしても、大いに活用してあなたの考える力を鍛えることをお勧めします。もしそんな訓練の場が身近になければ、あなた自身で、考える機会を作ってみると良いでしょう。じっくり考える時間を作ってみるのです。短時間でかまいません。テーマは、あなたの身近な問題や課題など、どんなことでもかまいません。答えを出すことを急がずに、自分の考えを整理するつもりで考えてみましょう。 

自分の考えが少し形になってきたら、自問自答を行って、あなたの考えを育てていきます。例えば、考えの筋道は通っているか?考えは足りているか?なぜ、自分はそう考えるのか、その裏付けはなにか?など、厳しい上司になったつもりで、自分の意見を叩いてみるのです。そして、それらの質問に答えるために、もう一歩考えを深めてみましょう。そうしたら、また叩いてみるのです。このようなプラクティスを繰り返すことで、あなたの考えや思いが少しずつ形を現してくるのです。

 考えることは、様々な試行錯誤を繰り返しながら、自問自答のプロセスを創り出していくことなのです。考えることを通してあなたの自問自答のパターンを増やしていくことが、考える力を伸ばすことにつながるのです。考える力を身に付けるためには少し時間がかかりますが、若い皆さんには十分時間があります。今から、あなたにあったペースで、考えること、自問自答を繰り返していくことが肝心なのです。

  

次の文献を参考にさせていただきました。 

ホンダ イノベーションの神髄        小林三郎 著      (日経BP社)

 

ヒューマンスキルと考えること

蓮華定院

蓮華定院

先月、高野山に行ってきました。その時、蓮華定院に泊まったのですが、蓮華定院は、真田幸村親子が九度山(高野山の麓)に蟄居していた時代、高野山での宿だったところです。真田家の家紋である六文銭が、至る所にありました。 

今回は、ヒューマンスキルの基本になる、考えることについて考えてみましょう。考えることについて考えるというと、何か妙な気もしますが、後の方の「考える」を「客観化して思考の対象にする」と置き換えれば、分かり易くなるのではないでしょうか。 

私たちは、日頃考えることについてあまり意識することはありません。無意識のうちに考えることを行っているようです。ということは、そもそもあまり考えていない?・・・でも、最近のように商品やサービスの知識化が進み、知的労働が増えてくると、考えることについて、少し真面目に考えてみることが必要なのかもしれません。どうも、いろいろと「考えること」や「アイディア」を出すことが求められていますし、「考える」ことの中身や質が問われてきているようです。 

話をヒューマンスキルに戻しましょう。私は、ヒューマンスキルとして、自分の力で考えることとともに、コミュニケーション力や問題発見・解決力、計画力、メンバーやチームを育成する力などをあげています。それらは、お互いに強めあうものなのですが、とりわけ考える力は他のヒューマンスキルの基盤になる大切なものと言えます。例えば、私たちがコミュニケーションを行う時、その効果を上げるために、相手から様々な情報を得ようとします。相手の反応を見て、自分の言ったことが正しく伝わっているかを判断したり、必要かあれば相手が理解しやすい言葉に置き換えたりします。また、大事な内容であれば、念のために相手に正しく伝わったことを確認することもあるでしょう。これらを瞬時に行う訳ですが、そこには、意識する、しないに関わらず、考える力が働いていることは確かなのです。 

また、問題を解決する場合には、考える力をフルに働かせることが求められます。問題解決がうまくいかないケースの多くは、考えることが足りていないことによるものです。発生した事象をありのままに観察して、問題自体を正しく認識することや、想像力を働かせて問題の根本的な原因や有効な解決策を見つけ出すことにも考える力が必要です。目に見える現象ばかりに気をとられていると、問題解決はうまくいきません。目に見えない力やメカニズムが問題を引き起こしたり、問題の解決を邪魔したりしているのです。問題を解決するためには、このような目に見えない力やメカニズムを見つけ出し、相手にする必要があるのです。 

目に見えないものを相手にするためには、考える力が必要です。私たちは、考える力を身に付けることによって、目に見えないものに手を伸ばすことができるのです。また、米国のある心理学者が、プロとアマチュアの違いをこう言っています。 

「アマチュアは目に見えるものを相手にするが、プロは目に見えないものを相手にしている。」 

考える力を身につけることは、コミュニケーション力や問題解決力などのヒューマンスキルを伸ばすとともに、プロフェッショナルへの道にもつながっているのです。

 

新しいスタートによせて

真田幸村公

真田まつり(真田幸村公)

真田まつり

真田まつり

 

信州上田では、先日「真田まつり」が盛大に行われ、上田市街地を武者行列が練り歩きました。また、2016NHK大河ドラマが「真田丸」に決まり、地元の戦国武将真田幸村が登場します。今から楽しみです。 

この春、社会人生活をスタートされた方もいらっしゃることでしょう。 

ここ数年、厳しい就職活動の様子がマスコミやネットで伝えられています。有名企業への志望の集中や内定がもらえない学生の疲弊など、学生の皆さん、企業双方にとって、厳しい試行錯誤が続いているようです。 

就職活動が厳しいということは、景気の動向もありますが、それだけ企業をとりまく環境が厳しくなっているということの表れなのでしょう。企業をとりまくビジネス環境は、経済のグローバル化や競合他社との厳しい競争を受けて、年々熾烈さを増しています。一方、大学などの教育システムがそうした厳しい現実に対応できているかと言えば、経済産業省が提唱している「社会人基礎力」などの取り組みもありますが、そうした動きはまだ一部にとどまっているようです。ですから、企業が新入社員を厳選したいと考えることは、自然の成り行きと言えるのかもしれません。 

企業をとりまくビジネス環境と教育システムのギャップが広がるに従って、新入社員に求められる知識や知恵は、年々高まっています。ですから、本当の学びは社会に出てからと思った方が良いのかもしれません。そういうと、学生時代には勉強する必要はない、と誤解されそうですが、決してそんなことはありません。学生の時には、社会の厳しい現実に立ち向かうためにも、専門知識を身に付けたり、学生の時にしかできないことを大いにやっておく必要があるのです。 

どんなことでも、頑張って取り組んでいれば、自分自身の良いところや悪いところが見えてくるものです。ついつい目をそらせがちですが、自分の長所や欠点に気づくことは、就職活動に生かせるだけでなく、これからのあなた自身の成長につながる大切な経験なのです。また、ものごとを自分の力で考えて答えを導きだす力や、身の回りで起こる様々なできごとから学ぶ力を身に付けていれば、これからの社会人生活においてきっと役に立つことでしょう。もちろん、不完全でも構いませんし、社会人になった今からでも、決して遅くはありません。学ぶ姿勢ができていれば、磨くためのチャンスはいくらでも見つけられるはずです。企業も、本当はそうした「学び、成長する人材」を求めているのです。 

いつの時代でも、企業や社会が成長する原動力は、若者の夢と希望です。これからの時代を切り拓くためにも、若者の夢や希望が必要なのです。希望通りの企業に就職できた皆さんも、できなかった皆さんも、本当の勝負はこれからです。 

 

※社会人基礎力

  「社会人基礎力」は、「基礎学力」、「専門知識」に加え、それらを活用して職場や地域社会で活躍するために求められる能力として定義された。

  「社会人基礎力」は、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」から構成される。

 

問題解決事始め

4月になり、信州上田もすっかり春めいてきました。桜もそろそろ咲きそうです。今回は、ワインバーグ先生のお話しの続きで、問題発見・問題解決を取り上げたいと思います。 

皆さんの職場や身の回りで起きる様々な問題、そうした問題に対して、問題解決者として振る舞うことを求められたとき、皆さんは、問題解決者として有効な解決策を示すことができているでしょうか?容易に解決できる問題なら良いのですが、悩ましい問題の解決を任された時には、空から万能の解決策が降ってくることを祈りたい心境になりますよね。 

ワインバーグ先生は、コンサルタントとして、長年クライアントの問題発見や問題解決に取り組んでこられ、そうした経験をもとに、「ライトついてますか-問題発見の人間学-」や「コンサルタントの秘密-技術アドバイスの人間学-」などの著書を書かれています。原書が書かれてからすでに30年も経っているのですが、本屋さんにならんでいるのを見かけると、ちょっとうれしい気持ちになります。そこには、人が問題に巻き込まれてしまった時に、どんな行動をとるのか、とってしまうのか、また、どう行動することがお勧めなのかが、ユーモアをまじえて描かれています。詳細はこれらの著書をご覧いただくとして、ここでは、特に印象に残っていることや、実際に役に立ったことを紹介してみたいと思います。 

問題解決では、最初に見えたものを問題の全てと思い込んで、すぐに解決を始めてしまいがちです。まして、あなたが問題の当事者であったり、だれかがすごい剣幕で「早くなんとかしろ!」と怒鳴っている場合は特にそうですよね。そのために、そもそも何が問題で、何を解決しようとしているのかを見失ってしまうことにもなりかねません。 

ワインバーグ先生は、問題を見つけた時に、すぐにその解決に飛びつくことを戒めています。特に、いろいろな人が関係している問題では、問題を取り巻く人の立ち位置によって見え方が違ってくるので、まずは問題の全体像を見極めるように、と教えています。ある人にとっては、大問題で、一刻も早く解決してほしい問題も、別の人にとっては、なんの不都合も感じない、あるいは、問題視されること自体が迷惑だ、ということさえあるのです。実際の現場では、問題の全体像を見極めることは簡単なようでなかなかできないものです。それだけに、重い教えであると思います。 

また、ワインバーグ先生は、問題解決者自身の先入観や思い込みが、ものごとをありのままに見ることを邪魔してしまい、そのことが問題の解決を妨げ、はたまた新しい問題を作り出してしまう、と指摘しています。誰でも先入観や思い込みはあるものです。でも、そうした先入観や思い込みが自分の視野を狭めていることに気づいている人は、どれだけいるのでしょうか。

 

私たちは、何か問題があると、つい見て見ぬふりをしたり、問題のすり替えや悪者さがしに走りがちです。そのために、せっかくの問題解決の機会を失い、不毛な議論を続けることにもなりかねません。問題をありのままに見ること、認めることによって、そもそも何が問題なのか、何を解決すれば良いのかが明らかになれば、もっと建設的でオープンな議論が行われ、有効な解決策を見出すことができるのかもしれません。さらに、問題の正体を明らかすることができて、そのことが関係者に共有されるだけで、問題が自然に解決に向かい始めることもあるのです。 

ワインバーグ先生の著作は、問題の解決を迫られている人にとっては、答えが与えられずに遠回りしているように思われるのかもしれません。たしかに、ワインバーグ先生の言葉は、答えを教えるというよりは、様々な自問自答の方法を教えているようにも思われます。でも、そうした自問自答を繰り返すことによって、問題をより深く理解することを助け、その根本的な解決にたどり着くことを可能にすると思うのです。私は、この自問自答のプロセスこそが、「考える力」、そして「知恵を生み出す力」を鍛えていくものであると思っています。 

現在のビジネスにおいては、様々な問題を解決していくことが求められます。しかも、スピードも求められているため、ややもすると、自分で考えようとしないで、答えだけを求める傾向があるように思われます。そういう時代だからこそ、じっくりと「考える力」を養うことが大切だと思うのです。近道をしようとして、道を見失ってしまっては元も子もありません。万能に見える答えも、皆さんの問題を解決してくれる保証はありません。また、私たちを取り巻く環境や発生する問題は日々変化しており、昨日の解決策が今日の問題発生源になっているかもしれません。 

解決することがとても困難に思える問題が解決できた時の達成感は、何ともいえないものです。まして、問題を取り巻く人々の協力によって解決できた時はなおさらです。問題が解決できたことで、たくさんの人たちが満足し、喜んでくれることでしょう。それと同時に、問題解決に取り組んだ人々は、ものごとを冷静に見る眼や、より深く考える力を手に入れることができるのです。今まで見えていなかった景色が見えてくるに違いありません。あなたも、問題解決の世界にチャレンジしてみませんか。あなたにとって、「きっとお得ですよ。」 

先日、技術評論社のHP(http://gihyo.jp)の中に、ワインバーグ先生のインタビュー記事を見つけました。ワインバーグ先生は、SF小説を書くことにもチャレンジしているそうです。70歳を過ぎてなお、新しい世界にチャレンジされ、学ぶことに貪欲なワインバーグ先生に、さらに尊敬の念を強め、勇気づけられた次第です。 

 

以下の文献を参考にさせていただきました。

「ライトついてますか-問題発見の人間学-」

       ドナルド・G・ゴース、GM・ワインバーグ 著  木村 泉 訳  (共立出版) 1987

「コンサルタントの秘密-技術アドバイスの人間学-」

       GM・ワインバーグ 著  木村 泉 訳  (共立出版) 1990

 

国宝松本城の画像

国宝松本城

 

 

ワインバーグ先生のこと

今回は、G.M.ワインバーグ(以下、敬意を込めてワインバーグ先生と呼ばせていただきます)についてお話ししたいと思います。 

ワインバーグ先生は、ソフトウェア開発の黎明期から現在にいたるまで、技術分野におけるリーダーシップのあり方や、問題発見・問題解決等について、多くの著作を世に出しています。先生の著作には有名なものが数多くありますので、読まれた方もいらっしゃることでしょう。ワインバーグ先生は、もともとIBMでソフトウェアの開発を行っており、NASAのマーキュリー計画にも参加しています。その後、コンサルタントとして独立し、企業へのコンサルティングやワークショップなどを行っています。 

私がソフトウェアの世界に飛び込んだ頃は、ソフトウェア開発に関連する本はほとんど無く、みんな手探りで格闘していたものです。コンピュータやソフトウェアに関連する情報があふれている今とは大違いです。私がワインバーグ先生を知ったきっかけは、コンピュータ雑誌「bit」に連載されていた「イーグル村通信」というコラムです。そこで、ワインバーグ先生の鋭い警句とユーモアあふれる文章にすっかり魅了されてしまったというわけです。 

仕事を覚え、まわりが見え始めたころ、トラブルに陥ったプロジェクトの再建を担当することが多くなりました。日々、次々に発生する問題や迫りくる納期と格闘する中で、チームリーダーとしての力不足を感じ、自信を持てないでいたものです。そんな中で、ワインバーグ先生の著書「スーパーエンジニアへの道」と巡り合いましたが、そこには、リーダーの役割や心構え、効果的なチーム運営など、私の現実の悩みや疑問に気づきやヒントを与えてくれる温かい言葉があふれていました。 

ワインバーグ先生は、リーダーシップをプロセスとして捉えています。そして、そのプロセスとは、「人々に力を与えるような環境を作り出すプロセス」であり、そして、「人は力を与えられると、自由に見、聞き、感じ、発言するようになる」のです。まさに、人を生かすこと、それがリーダーシップだというのです。また、プロセスであるということは、継続的に進化することを意味します。初めは小さな芽でも、経験から学び、大きく、望ましい形へと育てていくことができるのです。もちろん、経験のなかで、失敗することもあるでしょう。でも、失敗も大切な経験ですから、心がけ次第で失敗からもたくさんのことを学ぶことができるのです。 

リーダーシップというと、とかく生まれつき身に付いているものであるとか、ヒーローとリーダーシップを結び付けて考えがちですが、このような議論は、表面的な見方にもとづいたものと言えるのかもしれません。 

また、ワインバーグ先生は、リーダーにとってアィデアが大切であることも指摘しています。リーダーシップのMOIモデルといわれるものです。このモデルで、ワインバーグ先生はリーダーをリーダーたらしめる要素として、以下の三つを挙げていますが、その中に、アイディア、イノベーションが含まれています。

  M・・・動機づけ(Motivation)

        関係する人を突き動かす何ものか

  O・・・組織化(Organization)

        アイディアを実際に実現することを可能にする、既存の構造

  I・・・アイディア(Idea)ないし技術革新(Innovation)

        タネ、実現されるもののイメージ

実際に、解決を迫られている問題に立ち向かう時、リーダーを助けるのはアイディア、解決策のタネなのです。このタネを示すことで、メンバーの知恵が集まり、問題は解決へと向かいはじめるのです。今日のように、変化が常態化し、常に変わることを求められるようになると、アイディアは技術の世界だけでなく、全てのリーダーが持つべきものといえるのかもしれません。 

次回は、今回に引き続いてワインバーグ先生が語る問題発見・問題解決についてお話したいと思います。

 

以下の文献を参考にさせていただきました。 

「スーパーエンジニアへの道-技術リーダーシップの人間学-」

        GM・ワインバーグ 著  木村 泉 訳  (共立出版) 1991

 

※「bit」は共立出版のコンピュータサイエンス誌で、現在は休刊している。 

 

別所線「自然と友だち号」

別所線「自然と友だち号」

 

人づくりの原点

昨年、中学校の同級生が集まって、恩師の自宅を訪ねる機会がありました。今まで、同級会にも出席できずにいたのですが、ちょうど上田に戻ったところでしたので、今回は参加することができました。中学校卒業から40年余り、懐かしい仲間はみんな還暦を迎えた顔・・・でも、しばらく経つうちに、昔の面影が戻ってきて、気がつくと、思い出話に花が咲いていました。先生のお元気な姿、そして当時と変わらないはりのある声、とてもうれしく思いました。

山下達郎(実はファンなんです・・・)の曲に、「アトムの子」がありますが、ちょうどそんな時代でした。テレビでは鉄腕アトムが活躍し、どんなにいじわるな子でも、最後には仲良くなれた、仲間になれた。けっして豊かではなかったけれど、みんな夢を見ていた。そういえば、山下さんもちょうど同じ年の生まれなんですね。

先生の思い出といえば、こんなエピソードがあります。遠足の時、先生はいつもぼろぼろのベレー帽をかぶっていました。本当にぼろぼろで、なんで新しいものに変えないのかと、不思議に思ったものでした。後で、このベレー帽をかぶると事故に合わないので、手放さずにずっとかぶり続けていらっしゃることを知りました。先生は、私たち生徒の無事を願って、ぼろぼろのベレー帽をかぶり続けていたのです。

先生からは、いろいろ教えていただきましたが、特に、どんなことに対しても全力で取り組むこと、言葉だけでなく実際にやってみること、そして、毎日こつこつと積み重ねることが、最後に効いてくる、結果に結びつくことを教えていただきました。また、間違ったことは、どんなことでも真剣に、真正面から叱ってくれました。どんなに叱られても、「いいか、二度とこんなことはやるなよ!」という温かい声が聞こえてくるように思えたものでした。今思えば、小学校の時の先生もそうでした。どんなことでも、しっかり叱ってくれた。でも、叱られてもどこか優しく、温かい。そんな先生が、たくさんいらっしゃいました。

先生から教わったことは、どれも当たり前のことなのですが、そんな当たり前のことが、やろうと思ってもなかなかできないものです。私自身も何度も経験しました。今思うと、そうした大切なことを教えていただいた、貴重な時間であったのかもしれません。

先生の影響なのか、社会に出てからも人づくりへの思いがあったように思います。それは、私が社会に出て経験した、プロジェクトによるソフトウェア開発というワークスタイルによって、いっそう強められたように思います。プロジェクトは、技術の問題より人の問題のほうがはるかに成功に影響を及ぼす世界なのです。

今またこうして人づくりに関わろうとしているのも、中学の先生をはじめ、すばらしい方々との出会いがあったからなのかもしれません。そんな出会いがあって、今の自分があるように思います。そんな出会いに感謝する毎日です。

 

 別所温泉から上田方面を望む

別所温泉から上田方面を望む