考えるくせを知る

水田を走る別所線

水田を走る別所線

 

誰でも、ものごとを考える際には、いろいろな傾向やくせを持っているものです。考えるくせには、自分の考えを広げ、育てるものもあれば、その反対に、考えることを阻害してしまうものもあります。今回は、この考えるくせについて考えてみたいと思います。 

考えるという行為は、その人の感情や思いなどの影響を受けやすいものです。どれだけ客観的な立場で考えようとしても、その人が持っている価値観や信念、今までに経験したことなど、様々なことが無意識のうちに影響を及ぼしているのです。普段は、こうしたくせに気づくことはありませんが、自問自答を繰り返して考えを深めていくと、自分が持っている考えるくせに気づかされることがあります。もし自分の考えるくせが望ましくないものであったとしても、そうしたくせは、長い間の積み重ねによって身に付いてきたものですから、簡単に変えることはできません。まずは、自分の考えるくせを知ることが大切なのです。 

自分の考えるくせについて知ることは、私たちに考える力を伸ばすためのヒントを与えてくれます。もし、あなたの望ましくないくせに気づいたら、まずは、それらをありのままに認め、その上で、自分の考えるくせを補うことを考えてみましょう。

例えば、ものごとをネガティブに考える傾向が強い人は、ポジティブに、前向きに考えることを意識的に行うことで、ものごとの別の側面に気づくことができるかもしれません。もちろん、ネガティブに考えることはそれ自体悪いことではありませんし、ものごとを慎重に考えるという良い面もあります。ネガティブに考えることを否定するのではなく、ポジティブに考えることを自分のレパートリーに加えてみるのです。そうすることで、ネガティブであるという短所も長所に変えることができるのです。

また、主観的な考えに固執しがちな人は、周りの人の意見にもっと耳を傾け、相手の立場で考えることを心がけてみましょう。きっと、新しい発見や気づきがあるはずです。さらに、自分の意思や思いを強く持つことを、あなたの強みにできるかもしれません。

ものごとを表面的に捉えてしまう人は、もう一歩踏み込んで考えてみましょう。一歩踏み込むことで、分かったつもりでいたことが実は理解できていなかったことが分かり、ものごとをより深く理解することができるのです。 

このように、自分の考えるくせを知り、それらを補うことによって、より柔軟な考えやより広い視野を手にいれることができるのです。そうした努力を続けていくことで、自分が克服したいと思っている考えるくせを、有意義なものの見方や考え方に変えていくことができるのではないでしようか。 

前回、考える力を伸ばすためには、何よりも自分の力で良く考える事ことが大切である、とお話ししました。努力してこそ、身に付けることができるというと、なにか当たり前のことを言っているようですが、このことは、何人も逃れることはできないのです。成功者と言われる人たちも、その例外ではありません。成功者というと、能力や幸運にめぐまれていて、初めから成功を約束されているように思われがちですが、成功者にも不遇な時期があり、たくさんの失敗や修羅場を経験しているのです。逆境の中にあっても、信念をあきらめずに考えつづけ、行動したのです。いや、むしろそうした失敗や修羅場が彼らの感性を磨き、考える力を鍛えたのかもしれません。パナソニック(旧松下電器産業)の松下幸之助氏やホンダの本田宗一郎氏、京セラやKDDIを率いる稲盛和夫氏など、日本の著名な経営者が独自の哲学を生み出したことからも、そうしたことが垣間見えてきます。 

ビジネスで起こる問題には、正解はありません。正しいか間違っているかではなく、どれだけ考えたか、考え抜いているかが問われるのです。私も、そうした場面をたくさん経験しました。考えること、さらにもう一歩踏み込んで考え続けることによって、私たちは答えに近づくことができるのです。自分の考えるくせを知ることで、自分の考えがおかしな方向に迷い込むことを防ぎ、考えを一歩一歩深め、答えに近づいていくことができるのです。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です