「人づくり」のコンセプト

 このところ、ヒューマンスキルという言葉を耳にする機会が増えています。

 ヒューマンスキルは、「対人関係能力」や「人間力」とも呼ばれ、今やビジネスマンにとって欠かせないスキルとして、注目を集めています。

 弊所では、ヒューマンスキルを開発することが、すなわち「人づくり」である、と考えています。ヒューマンスキルに優れ、豊かな「人間力」を持つことは、ビジネスで成果を上げることはもちろんですが、ビジネスに限らず、人生を実り多いものにすることにもつながります。

 弊所では、ヒューマンスキルを広く「人間力」と捉えています。
 今や「VUCAの時代」とも言われ、テクノロジーの進歩や価値観の多様化などに伴って、社会の複雑化や変化のスピードはますます加速しています。ネットワークやAIなどの、新しいテクノロジーが次々に登場し、進化しているのは、皆さんご存じのとおりです。そんな今の時代にこそ大切なものが、人間らしい力であり、「人間力」なのです。

 今や人生百年時代です。スキルや能力の開発に取り組み、自らの価値を高めることは、ますます重要になっていると言えましょう。弊所では、こうした時代の変化に対応するために、新しいスキルモデルを提案しており、ヒューマンスキルの源泉として、六つの力を定義しました。このことで、ヒューマンスキルを伸ばすための目標づくりが容易になり、皆様の「自分づくり」に役立てていただけるものと確信しております。
 ヒューマンスキルの開発を通して、皆様の「自分づくり」のお手伝いをさせていただくことが弊所のミッションなのです。

 ※VUCA・・・V(Volatility)ー変動性、U(Uncertainty)ー不確実性、C(Complexity)ー複雑性、A(Ambiguity)ー曖昧性

 以下に、弊所が考えるヒューマンスキルの開発、すなわち「人づくり」のコンセプトについてご紹介致します。

  ヒューマンスキル開発を中心とした「人づくり」

   自立が成長の第一歩

  ヒューマンスキルが知恵を生む

  ヒューマンスキルからピープルマネジメントへ

ヒューマンスキル開発を中心とした「人づくり」

 皆さんの中には、ヒューマンスキルは生まれつきのもので、今さら伸ばすことはできないのでは?と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、ヒューマンスキルを伸ばしたいけれど、その方法が分からずに困っていらっしゃる方も多い様です。
 確かに、ヒューマンスキルは、その人の価値観や性格に根ざしているところがたくさんありますから、簡単には伸ばすことができないのも事実かもしれません。そのため、長い間ヒューマンスキルの開発は自然発生に任されていたのでしょう。ですから、生まれつきヒューマンスキルに長けている人や、たまたま何かのきっかけでそれらを手に入れることができた人が、その恩恵に与れたのです。

 弊所では、ロバートカッツのスキルモデルを基に、新しいスキルモデルを提唱しています。また、ヒューマンスキルの源泉として、六つの力を定義しました。(詳細は「ヒューマンスキル再考」を参照)そのことで、ヒューマンスキルを開発するためのアプローチを、具体的なものにすることができるのです。
 そうはいっても、ヒューマンスキルは、知識やテクニックとは違って、頭で理解するだけでは身につけることは難しいものです。ヒューマンスキルを伸ばすためには、自分自身に対する「気づき」が大切です。日々の業務や暮らしのなかにある「きっかけ」を生かして自分自身をより深く知り、自分の強みや弱みに気づくこと。そのことで、皆さんのものの見方や行動が変わることが、ヒューマンスキルを伸ばすことにつながるのです。言い換えれば、ヒューマンスキルは実践のスキルなのです。もちろん、そうした「きっかけ」や「気づき」は、皆さん一人一人違っているのでしょう。ですから、その人の持ち味が出てきて当然なのです。

 このようにして身につけたヒューマンスキルは、その人を成長させると共に、価値観や性格にも少なからず影響を与えることでしょう。そのことは、皆さんのための「自分づくり」に他ならないのです。

自立が成長の第一歩

目標イメージ


 自立(自律)することは、人が成長するための第一歩です。

 多くの情報がネットから簡単に手に入り、知識や情報があふれる現在は、便利な反面、気づかないうちに借り物の知識や考えが身についてしまったりしています。また、以前に比べて、自分の頭でものごとを考えることは、案外減っているのではないでしょうか。そのことが、まわりに流されない、心の自立を難しくしてしまっているのかもしれません。

 社会で生きていくことは、決して楽なことではありません。まわりの声も、気になるでしょう。先の見えない今日、自分だけが頼りなのです。他の人の言葉や意見に従うことは、自分で責任を取らなくて良く、一見自分を守っているように見えます。うまくいかなかったら、人のせいにすればよいのです。でも、そんなことはいつか見透かされてしまいますし、そのことで失うものもたくさんあるのです。

 自立すること、自分で決めることで自発的な行動が生まれますし、自分の行動に責任を持つことにもつながります。自分で決めたことは、人のせいにはできません。結局、自分で道を切り開いていくことに行きつくのです。また、自分の行動に責任を持つことで、傷つくことやつらいこともあるでしょう。でも、そうした経験のひとつひとつが、皆さんを鍛えるための試練や学びの機会なのです。日々の成功や失敗から学び続けること、そんな試行錯誤を通して、一歩づつ成長することができるのです。

 だれでも最初は未熟なものです。自分の未熟さを知り、今の自分を認めることから成長は始まるのです。

    「自立することは、自分の人生の主人公になることである。」

ヒューマンスキルが知恵を生む

教育方針イメージ


 私たちは、学校教育で様々なことを学びました。けれど、学校で学んだことが、社会に出てそのまま生かせるわけではありません。また、社会が変化するスピードが速くなるにつれて、学校で学んだことと社会で求められるもののギャップは、広がっているのです。

 学校では正解がある問題の解き方を学びました。そのため、問題には正解があるもの、と考えることが当たり前になっているのかもしれません。ところが、社会では、正解のない問題を解くことや、答えがいくつも考えられる問題について、より良い答えを見つけ出すことが求められるのです。しかも、その答えをスピーディに出さなくてはなりません。そのためには、ものごとを考える力、とことん考え抜く力が必要なのです。

 また、業務知識や専門知識は豊富なのに、なかなか成果が上げられないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。成果を上げ、目標を達成するために、知識が必要なのは言うまでもありませんが、知識だけでは十分ではありません。知識と同時に、あるいはそれ以上に知識を生かすための知恵が求められるのです。今日、仕事に必要な知識や身に付けるべきスキルは増加する一方です。そのために、知識やスキルの習得にばかり目がいってしまい、肝心の知恵を出すことがないがしろにされているように思うのです。

 知識をたくさん身に付ければ、知恵はおのずと湧いてくるように思われがちですが、知識と知恵は別物です。その間には、飛び越えるべきギャップがあるのです。知恵は、皆さんが身に付けた業務に関する知識や経験と、コミュニケーション力や考える力などのヒューマンスキルとの間で、ケミストリー(化学反応)を起こす事によって生み出されるのです。今や知識は容易に手に入れることができます。求められているのは知恵なのです。

 皆さんが持っているヒューマンスキルに気づき、さらにそれらを伸ばすことによって、あなたは、あなたの業務知識や専門知識を、今まで以上に生かすことができることでしょう。多少乱暴かもしれませんが、これらを表すと次のようになります。

  知恵 = 業務知識・経験、専門知識 × ヒューマンスキル

 今日のように変化が激しく、先が見通せない時代では、今までにない新しい知恵やアイディアの価値が高まっています。知恵やアイディアは人間だけが生み出すことのできるものです。どんなにテクノロジーが進歩しても、知恵を出すことは機械にはできないのです。


   「学校で学んだことを、一切忘れてしまったときになお残っているもの、それこそ教育だ。」
                                ーアインシュタインー


ヒューマンスキルからピープルマネジメントへ


 日本の企業では、長年、仕事ができることが管理職の条件と言われてきました。仕事ができることはもちろん大切なことですが、その一方で、管理職のヒューマンスキルの開発は、ほとんど自然発生に任されていたように思うのです。

 私たちの仕事は、その多くがチームで行われます。そこで重要な役割を果たすのが、チームのリーダーやマネジャーです。職場のリーダーやプロジェクトリーダーの皆さんには、チームの課題を解決し、目標を達成するために、様々な知恵を出すことが求められます。
 もちろん、実際に成果を出すのはチームのメンバーひとりひとりですから、リーダーがどんなに頑張っても、それでチームの成果が上がるわけではありません。リーダーにはリーダーの役割があり、そのために求められるスキルがあるのです。そうしたスキルがチーム力を高め、業務の成果を向上させます。また、チームの生産性を高めると共に、チーム内で共有された知識や知恵を、会社の共有財産にできるのです。

 リーダーに求められる資質のなかで、大切なものがリーダーシップです。リーダーシップには、業務の内容やチームの特性によって様々な形態が求められますし、今日、社会の変化や価値観の多様化などによって、大きく様変わりしつつあります。
 リーダーシップはリーダーになったからといって、すぐに身に付けられるものではありません。リーダーシップは、リーダーが持っている全てのスキル、知識や経験から醸成されるものです。その中でも、ヒューマンスキルが果たす役割は大きく、リーダーシップの源泉とも言えるものなのです。

 弊所が提案するヒューマンスキルは、皆さんがメンバーとして活躍されることを支援することはもちろんですが、皆さんがメンバーからリーダーに成長するプロセスを支援するためのものでもあるのです。 ヒューマンスキルの開発が、即ちリーダーシップの強化を促すと言っても良いでしょう。皆さんがメンバーとして学び、経験を積んでいる時間は、リーダーとして活躍するための準備期間なのです。

 今日のような時代に、強靭で変化に対応できる組織や企業では、従業員の能力や可能性を生かす「ピープルマネジメント」がうまく回っていると言われています。「ピープルマネジメント」は、ヒューマンスキルに長けたリーダーやマネジャーの存在があって実現できるものなのです。そんなリーダーがいる元気で創造的なチームが増えることは、企業や組織の文化風土を時代が求めるオープンで創造的なものへと変えていくことでしょう。