「対人関係能力」は、コミュニケーション力や協調性など、職場での良好な人間関係を作る力はもちろんですが、お客様への対応や対外的な交渉力などを行う際にも大切なものです。
また、「人間力」としては、向上心や忍耐力などと共に、最近では、変化に対応できる柔軟性や何事にもチャレンジする積極性なども注目されています。また、チームをまとめ、目標を達成するためのリーダーシップもヒューマンスキルとして扱われることもあります。
この様に言葉の意味はとても幅広いのですが、「ヒューマンスキルって何?」と改めて聞かれると、 実はよく分らないのが本当のところかもしれません。そのためでしょうか、ヒューマンスキルの大切さは分かっていても、いざヒューマンスキルを開発しようとすると、どうしたら良いのか分からない、という声をよく聞きます。
弊所では、ヒューマンスキルを開発可能なものと考えています。また、変化の激しい現在に対応できる新しいスキルモデルとヒューマンスキルを支える六つの力を定義しています。
そこで、ここではヒューマンスキルを最初に提唱したカッツの理論や、弊所が考える新しいスキルモデルとヒューマンスキルを支える六つの力について紹介したいと思います。また、それら六つの力、ひいてはヒューマンスキルの伸ばし方についても、併せて紹介しましょう。
まずは、カッツの理論から見ていきましょう。
カッツの理論
ヒューマンスキルを最初に提唱したのは、ハーバード大学のロバート・カッツ教授です。ロバート・カッツ教授は、1955年に、マネージャや管理者に求められる三つのスキルを提唱しました。そのうちのひとつがヒューマンスキルで、テクニカルスキルとコンセプチュアルスキルを合わせて、「カッツの理論」、「カッツのスキルモデル」と呼ばれています。
ここで、これらのスキルは、以下の様に定義されています。
ヒューマンスキル
・「対人関係能力」とも呼ばれ、他者や周囲の人との円滑な関係を作り、維持するために必要な能力や技術。-例えば、職場の上司や同僚との良好な関係を生み出す力など-
テクニカルスキル
・「業務遂行能力」とも呼ばれ、担当する業務を遂行するために必要な専門知識や技術。
仕事をする上で前提になるスキルで、担当する業務によってその内容は異なる。
-例えば、商品の販売業務であれば、扱う商品についての知識及び競合するライバル商品についての知識など-
コンセプチュアルスキル
・「概念化能力」とも呼ばれ、周囲で起きている事象や状況を構造化したり分析して、その本質を理解する能力。また、抽象的な考えやものごとの大枠を理解する能力。
-例えば、ものごとを論理的に考える力や、問題の本質を理解して解決する力など-
また、カッツ理論では、職位を以下の三段階に分類しています。
ロワーマネジメント(監督者層)・・・職場のリーダー、主任、店長など
ミドルマネジメント(管理者層)・・・部長、課長など
トップマネジメント(経営者層)・・・社長、役員、事業部長など
それぞれのマネジメント層は、会社の規模などによって呼び方は違いますが、ここではその一例を示しています。
カッツの理論によれば、テクニカルスキルはロワーマネジメントで最も必要とされ、上位のマネジメント層になるほどその必要性は減っていきます。一方、上位のマネジメント層ではコンセプトスキルの必要性が増してくると言われています。全てのマネジメント層で重要なスキルと言われているのが、ヒューマンスキルなのです。
カッツの理論は、今日まで人材開発の理論として、数多く採用されてきました。ヒューマンスキルの存在を明示化して、その役割や重要性を明らかにした功績は大きいものがあります。