「働き方」の改革(続き)

上田城の夜桜

上田城の夜桜

上田城の夜桜

上田城の夜桜

 

信州上田もすっかり春めいてきました。このところ初夏を思わせる暖かさで、桜の開花も早まりそうです。今年も、「上田城千本桜まつり」が4月7日(土)~4月22日(日)に行われます。上田城の夜桜もまた格別です。

今回も前回に続いて、「働き方改革」について考えてみたいと思います。前回は、「働き方改革」をマクロ的に捉えたお話しでしたが、職場での「働き方」を取り巻く状況は実に様々です。個別のケースを見てみると、また違った景色が見えてくるのかもしれません。

もしもあなたがマネジャーで、部下に残業を頼むとしたら、仕事ができる社員とそうでない社員のどちらに頼むでしょうか?多くの方が、仕事ができる人に頼みたいと思うのではないでしょうか。また、やる気のある人とそうでない人はどうでしょう。そんなこともあって、職場では、残業はやる気のある社員や有能な社員など、特定の社員に偏ってしまいます。このような偏りが行き過ぎると、長時間残業や過労死など不幸な事態を招きかねません。

また、マネジャーが率先して残業している職場もあるでしょう。上司が帰らないので、仕事が終わっても帰れないという若い社員も多いのかもしれません。マネジャーが仕事を抱え込んでしまっているのかもしれませんが、この場合、マネジャーが本来行うべき仕事が出来ているのか疑問です。マネジャーが忙しくしていると、職場に目が行き届かなくなり、様々な課題が手つかずになってしまいます。また、「働き方改革」を単に残業を減らすことと考えているマネジャーも問題です。マネジャーから「早く帰れ」と言われれば、喜んで仕事の手を抜いてしまう社員がいるかもしれません。その結果、誰かの残業を増やすことにもなりかねません。いずれの場合にも、マネジャーがどれだけ本気で残業を減らそうとしているか、その意思と力量が問われているのです。

一律の残業規制は効果もあるのでしょうが、もちろんそれで全ての問題が解決する訳ではありません。仕事量の適正化や非効率な業務の見直しなど、残業を減らす具体的な取り組みが行われなければ、仕事を家に持ち帰ったり、サービス残業のような目に見えない残業を増やすことにもつながりかねません。また、深刻な人手不足の職場では、仕事がまわらずに、会社自体の存続も危ぶまれることになってしまいます。

Business Insider Japanが行ったアンケート調査によれば、職場やあなたの「働き方改革」への取り組みについては、「かけ声はあるが、実態は変わっていない」が34%と最も多く、「取り組みは特にない」が23%で続いています。また、「一切関係ない」との答えも1割近くあり、職場での取り組みはまだまだのようです。

職場にはそれぞれ固有の課題があります。今回のテーマである「働き方改革」を巡っても、職場にある様々な課題が浮き彫りになってくることでしょう。そうした職場の現実や課題をマネジャーが正しく認識して、改善のために知恵を絞ることが必要なのではないでしょうか。そうした課題を解決することはマネジャーの本来の役割なのですが、どうも問題の原因の多くがマネジャー自身に起因しているのが現実のようです。マネジャーが本気になれば、社員の知恵や力も集まってきます。マネジャーの気づきが、職場の「働き方」を改革して、より生産的な働き方、マネジャーと社員のより生産的な関係を生み出すことにつながると思うのです。

「勢いのあるところ、必ず必死のひとりがいる。」相田みつを

 

*「「終わるわけない仕事量」」若手488人が挙げる残業減らない理由トップ5 :「上司は仕事以外の人生がない」との声も   Business Insider Japan 2018/3/16

「働き方」の改革

別所温泉駅イルミネーション

別所温泉駅イルミネーション

別所温泉駅イルミネーション

別所温泉駅イルミネーション

 

信州の厳しい冬もようやく終わりが見え、日差しのぬくもりに春の訪れを感じます。今年の寒さは例年になく厳しかったためか、春の訪れが待ち遠しく思われる今日この頃です。

このところ、「働き方改革」について、様々な議論が行われています。長時間残業や過労死といった不幸なできごとがそのきっかけなのですが、一方で、その背景には日本の労働生産性の低さもあるようです。そこで、今回と次回の2回にわたって、この「働き方改革」について考えてみたいと思います。

OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本の時間当たりの労働生産性はOECD加盟35カ国中20位で、主要先進7カ国では最下位になっています。また、かつては世界一を誇った製造業の労働生産性(就業者一人当たり)も、主要29カ国中14位とずいぶん様変わりしています。

一方、米国の調査会社ギャロップが行った、各国の企業を対象にした従業員の意識調査によると、日本では「熱意あふれる社員」は6%、「やる気のない社員」は70%で、調査した139カ国中132位になっています。ちなみに、米国では、「熱意あふれる社員」は32%、日本の5倍強です。2かつて、勤勉で会社への帰属意識が強いと言われていたのが嘘の様です。こうした働く意識の変化も、先にお話しした労働生産性に影響を与えているのかもしれません。

何が働く人のやる気を削いでしまったのか、その理由は様々なのでしょうが、かつては、日本的経営が世界の手本になった時代もありました。その頃は何事も右肩あがりで、将来への希望や期待が感じられたものです。その後、バブル崩壊や平成の長いデフレを経て今に至るのですが、そんな時代の変化も、社員の意識を変える一因になっているのかもしれません。

また、この間に、労働の姿も様変わりしました。かつて、国内の安価な労働力に支えられた工場の多くは、安価な労働力を求めてアジア諸国へと移っていき、国内には設計や企画部門などが残りました。作れば作るだけ売れた時代は過去の話。売るためは商品に付加価値を付けたり、独創的な商品を開発したりと様々な知恵を出すことが欠かせなくなっています。そのために、労働の主体が労働集約型から、知識労働へと変化しているのです。もちろん、折からの情報化やデジタル革命の進展なども、こうした変化に一層拍車をかけています。

かつて、世界の手本になった日本的経営、それはあくまでも「モノづくり」のマネジメントです。「上意下達の指示」、「長時間の労働(を美徳とする文化)」や「年功序列による昇進」など、「受身的なまじめさ」を持った日本人のメンタリティには合っていたのかもしれません。ところが、あまりにも成功体験が強かったせいか、今でもそうした管理スタイルが少なくありません。そうした「過去の成功モデル」が、知識労働や今の働く人の意識とミスマッチを起こしているように思うのです。

今や、知識労働にふさわしいマネジメントが求められているのです。かつて、米国も長年苦しんできましたが、マネジャーの意識の変化がその再生に役立ったと言われています。マネジャーが部下といっしょに成果を出すこと、部下の成長を支援することで、「熱意あふれる社員」が増え、生産性も上がったのです。マネジャーの意識が変わったことが大きかったのでしょう。ところが、日本においては、未だ知識労働のマネジメントに舵を切れていないのが現状ではないでしょうか。

労働も「量」ではなくて「質」が問われる時代です。生産性向上を単に「時間やコストの削減」と捉えていては問題は解決しません。知識労働では、知恵を生み出すことが求められます。どうしたら知恵を、そして顧客の望む価値を効率良く生み出すことができるのかが問われているのです。そのために、マネジャーやリーダーの役割はどうあるべきか、また、働く人はどの様に仕事と取り組んだら良いのか、これからの時代の新しいワークスタイルを創出することもまた、「働き方改革」の大切なテーマであると思うのです。そのことを職場のマネジャーやリーダー、そして働く人が考える良い機会なのではないでしょうか。

*1 「労働生産性の国際比較 2017年版」 日本生産性本部

*2 「熱意ある社員 6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査」 2017/5/26 日本経済新聞 電子版

 

決して折れない心

別所温泉北向観音

別所温泉北向観音

別所温泉北向観音

別所温泉北向観音

新しい年、2018年。初詣に別所温泉の北向き観音に行ってきました。以前お参りした時は、別所温泉駅のあたりからずっと人が並んでいたのですが、今回は、北向き観音の手前で少し並んだだけで、お参りすることができました。ちょっと寂しい気もしますが…今年一年、良い年にしたいものです。

新しい年を迎えるたびに、世の中が変わるスピードが速くなっているように感じます。ネットやスマホはもはや当たり前ですし、AI(人工知能)の進歩は、IT(情報技術)や自動車などと結びついて、急速に人と技術の距離を縮めています。AIとはいっても、まだまだ「AIもどき」が多いのも事実なのですが、人間の得意技である「学習する能力」を身に付けて、活用の場をさらに広げていくことでしょう。人とAIの距離が縮まるにつれて、様々な議論が巻き起こりました。どんな仕事がAIにとって代わられるのかなど、気の早い議論も週刊誌を賑わしました。AIの進歩は、改めて「人間とは」という問いかけを発しているようです。

年末に、海洋冒険家白石康次郎さんの講演を聞く機会がありました。白石康次郎さんといえば、世界一過酷な世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に、アジア人として初めて出場したことでも有名です。今回は、残念ながらレース途中でメインマストが折れてしまい、途中棄権となりましたが、4年後の再出場を目指しているとのことでした。講演会のテーマは「決して折れない心」。白石さんがヨットマンとして、どのように夢を実現したのか、その生き方について話されました。幾度もの失敗や挫折を乗り越え、何度も涙を流してきた白石さん。そんな逆境から逃げずに闘ったことで、今の白石さんがあるのでしょう。本当にいい顔をされていました。

白石さんが大学生と一緒に作った「マイナスをプラスに変える行動哲学」という本があります。現役の大学生と白石さんが、5人のトップアスリートとのインタビューを通じて、その行動を支える哲学に迫るというものです。トップアスリートといえば、天賦の才能を与えられた一握りのエリートと考えがちですが、彼らも生身の人間。怪我もすれば悩みもします。そんな逆境のなかで彼らを支え、逆境を克服できた思いや哲学、そんなトップアスリートの生の声には、私たちにも気づかされることがたくさんあります。

また、大学生の持つ漠然とした不安や本音なども、この本から伝わってきます。何でも手に入る様で、実は本当にやりたい事や目指すものが見つけにくい今の世の中。失敗を恐れずにチャレンジしよう、ときれい事を言われても、いざ失敗すれば、打って変わって厳しい叱責。これでは、失敗を恐れて、チャレンジすることに二の足を踏む若者が増えるばかりです。白石さんは、そんな失敗に寛容でない社会を作ったのは今の大人達、とかなり手厳しい。

終身雇用が崩れて久しい今日、先日の新聞報道によれば、「自己啓発」市場は9,000億円に拡大し、平成元年に比較して3倍に伸びているそうです。大企業の経営破綻やリストラなど、将来の不安がそんな動きを後押ししているのでしょう。もはや、自分の成長は自分で責任を持つ時代なのかもしれません。

人は誰でもはじめから完全ではありません。失敗や苦難を経験して、それらを乗り越えることで成長していくのです。社会に出たばかりの若者たちには失敗する権利があるのです。若者たちにチャレンジすることをためらわせてはいけません。「失敗を人のせいにしない」、「自分に配られたカードで勝負するしかない」という白石さんの言葉は、人間だけに許された、「折れない心」を育てる上で欠かせない大切なことを示していると思うのです。

「もし、過ちを犯す自由がないのならば、自由を持つ価値はない。」

-マハトマ・ガンジー-

以下の文献を参考にさせていただきました。

「マイナスをプラスに変える行動哲学」 白石康次郎著 (生産性出版) 2013

 

謙虚なコンサルティング

上田城の紅葉(夜景)

上田城の紅葉(夜景)

上田城の紅葉(夜景)

上田城の紅葉(夜景)

 

紅葉を楽しんでいたのもつかの間、もう師走です。今年も残り少なくなり、信州上田にも、いよいよ厳しい寒さがやってきます。

前回は、葛飾北斎についてお話ししましたが、世の中には、年齢に関わらず活躍されている方がたくさんいらっしゃいます。今年、邦訳が出版された「謙虚なコンサルティング」の著者エドガー・H・シャイン先生(以下シャイン先生)もその一人です。

シャイン先生はマサチューセッツ工科大学(MIT)の名誉教授で、1928年生まれといいますから、ちょうど90歳になられたところでしょうか。シャイン先生は長年にわたって、組織文化や組織開発などのコンサルティングを行っていますが、本書で、研究や教育そしてコンサルテーションを行う中で発見したことや考えたことを「謙虚なコンサルティング」というコンセプトとしてまとめています。この短いコラムでその全てをお話することはできませんが、そのさわりを紹介しましょう。

シャイン先生は今まで長年使われてきたコンサルティングのパターンには、アメリカの文化が大きく影響していると言っています。シャイン先生は、「それは「自分が話す」ことを理想だとする文化であり、ひいては支援やコンサルティングを行う場合も、まず「診断」し、次いで「助言の名のもとに、自分が話す」というスタイルが、コンサルティングのお決まりのパターンになったのである。」と言っています。コンサルタントは、クライアントが本当に解決したいと思っている問題ではなくて、診断と分析によって作られた問題について、その解決策を雄弁に語ります。ところが、その問題は、クライアントが本当に困っている問題とは違うことが多いと言うのです。

こうしたコンサルタントのパターンは、解き方がすでに分かっている技術的問題には効果を上げてきたことも事実です。ところが、今や組織が直面している課題は、より複雑になり多様化しています。その中には、解決に必要な知識や技術がよく分からない「適用を要する課題」と呼ばれる問題も存在しているのです。「適用を要する課題」はハーバード・ケネディスクールのロナルド・A・ハイフェッツ教授が提唱しているものですが、その課題に取り組むためには、「クライアント自身が学習を続けて、ものの見方、世界のとらえ方を変えていく(適用していく)必要がある」とシャイン先生は言っています。「適用を要する課題」では、コンサルタントがいくら組織を「診断」しても、問題の本質をつかむことは難しいものですし、今までのパターンは通用しないのです。それらを解決するためには、今までのパターンとは一線を画した、新しい支援のアプローチが求められるのです。

「謙虚なコンサルティング」では、シャイン先生がこれまでに経験された実際の問題について、「適用を要する課題」に対してコンサルタントがどのように振る舞うことが求められるのかが示されています。シャイン先生は、主役はあくまでもクライアントであり、コンサルタントはクライアントが気づくことに集中することが大切だ、と言っています。「「問いかけ」や「聞く姿勢」によって、クライアントは自分自身にとって本当に気がかりなことや、これまで目を背けていた大切なことに気づく」のです。このことに集中することで、本当の問題、クライアントが本当に困っている問題を見つけ出すことができる、これこそがコンサルタントの役割であり、「本当の支援」だと言うのがシャイン先生の考えなのです。

シャイン先生は、このような支援の問題は、コンサルタントとクライアントとの間に限らず、管理職と部下の関係にもあてはまると言っています。ますます複雑になり多様化する問題に対して、リーダーや管理者がどうしたらよいか見当がつかないケースが増えています。本書は、コンサルタントはもちろんですが、部下の支援者でもあるリーダーや管理者がこうした難題に立ち向かうための、救いの一冊だと思うのです。

以下の文献を参考にさせていただきました。

「謙虚なコンサルティング」 エドガー・H・シャイン著 監訳 金井壽宏 (英治出版) 2017

 

葛飾北斎に思う

北斎館

北斎館

岩松院

岩松院

先日、小布施を訪れる機会がありました。小布施というと栗で有名ですが、また、葛飾北斎の町としても有名です。平日にも関わらず、多くの観光客でにぎわっていました。「北斎館」で「北斎漫画」や祭屋台の天井絵などを見てから、岩松院の天井絵「八方睨み鳳凰図」を鑑賞しました。するどい目力に、心の中まで覗かれているうな、そんな気分になりました。いずれも、ぜひ一度見たいと思っていましたので、時間を忘れて見入ってしまいました。

 

言うまでもなく、葛飾北斎は、「富嶽三十六景」などで有名な江戸時代の浮世絵師です。また、ゴッホをはじめ、世界の多くの画家や音楽家に影響を与えたと言われています。

北斎が「北斎漫画」を描いたのが50歳代、「富嶽三十六景」は60歳代から70歳代の作品です。いずれの作品も、まったく年齢を感じさせません。「北斎漫画」には約4,000点もの様々な風物や人物などが描かれていますが、これらは時にコミカルであり、現代のイラストやポップアートにも通じるものがあります。

葛飾北斎が小布施を訪れたのは計4回、いずれも80歳を超えてからと言われています。岩松院の「八方睨み鳳凰図」は4回目に訪れた時、北斎88歳から89歳にかけての作品だそうです。江戸から小布施まではざっと260Km。老人にとっては、厳しい旅であったに違いありません。晩年、自らを「画狂老人(がきょうろうじん)」と呼び、生涯、絵画に対する熱い思いを抱き続けた北斎。そんな思いが小布施までの長旅を支えたのでしょう。

葛飾北斎の人生に思いを馳せると、人の持つ可能性について考えさせられます。人が成長する力には、年齢は関係ないのかもしれません。何かを目指したり、何ものかになりたいという強い思いを持ち続けていれば、いくつになっても成長することができるのでしょう。人は、年を重ねると、できないことをとかく年齢のせいにしがちです。もちろん、体力など、若い人にはかなう訳がありませんし、年齢とともにできないことが増えてくるのも事実です。でも、年齢を重ねているからこそできること、若者にはとても真似のできないことがあるのも事実です。

北斎は、90歳で人生の幕を閉じますが、死に臨んで、こんな言葉を残しています。

「天があと5年の間、命保つことを私に許されたなら、必ずやまさに本物といえる画工になり得たであろう」

最期まで、さらに上を、本物を目指していたのです。

北斎の様にはなれないにしても、いくつになっても成長する心を失わずにいたいものです。

小布施の街並み

小布施の街並み

 

そして世界は動いている

朝日と別所線

朝日を浴びて走る別所線

 

新しい年、2017年がスタートしました。お正月三が日、信州上田は、お天気にも恵まれ、穏やかなお正月を迎えました。

昨年は、信州上田は大河ドラマ「真田丸」一色の年でしたが、世界に目を転じると、世界中を驚かせるニュースが駆け巡った一年でした。大方の予想に反してイギリスは国民投票でEUからの離脱を決め、アメリカ大統領選挙では、トランプ候補が45代目の大統領に当選しました。これらのニュースは、今までの世界秩序の大きな変貌を予感させるもので、多くの皆さんが漠然とした不安の中で新年を迎えられたのではないでしょうか。

言うまでもなく、EU(ヨーロッパ連合)は、二度の世界大戦で荒廃したヨーロッパを復興し、平和を実現するために生まれたものです。EUの前身EC(欧州共同体)は、当初6ヶ国でスタートしましたが、現在は、28の国々が加盟しています。このEUから、しかも大きな影響力を持つイギリスが離脱するというのですから、ただ事ではありません。今回のイギリス離脱の直接の引き金は、ヨーロッパ各地で続発するイスラム国のテロや多数の難民の流入と言われていますが、どうもそれだけではないようです。加盟各国の自主性とEUの権限の優劣の問題、言い換えれば、加盟国のアイデンティティの問題や、EUに対する不平等感、さらには改善されない高い失業率(EU平均10%)への不満など、以前から。EUに対する不信感も根強く存在しているのです。それにしても、繁栄と平和を実現するために、ヨーロッパから国境を無くすという壮大な夢が、結果的にテロの拡散を招いてしまったことは、残念な皮肉です。

トランプ大統領の誕生も、大方の予想を裏切るものでした。予備選挙中から、その品性を疑いたくなるような暴言に、多くのアメリカ国民が眉をひそめているとの論調がメディアで伝えられていました。ところが蓋をあけてみると、予備選挙で共和党候補になり、さらには本選挙でも勝利を収めたのです。そのことは、実はトランプ候補が言っていたことには(その全てではないにしても)、多くの国民の本音も含まれていたのかもしれません。工場が海外に移転したために、職を失い、賃金の低下に苦しむ人々(特に白人の中産階級と言われています)の不満が渦巻いていることも確かでしょう。さらに、頻発するテロや不法移民の問題も、現状への不安や不満を後押ししていると思われます。これらの問題を単純化して攻撃的な言葉で喝破し、感情に訴えたトランプ候補への期待が、票につながったのかもしれません。

ただ、トランプ大統領の誕生が、パンドラの箱をあけてしまったことは確かです。グローバリズムを率先してきたのは他ならぬアメリカですし、ここに来て、マイノリティに対する差別や迫害が増えているとの報道もあります。また、トランプ大統領の誕生は、フランスやイタリア、さらにドイツでのナショナリズムやポピュリズムを勢いづかせています。感情に訴えることは、一歩間違えると感情を煽ることにつながりかねません。多様性を認め、自由と平等、博愛という価値観を持つアメリカはどこへ行ってしまったのか、と思わざるを得ません。

そんな中で、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したニュースも、世界中を驚かせました。彼の楽曲が文学なのか、そんな議論も起こりましたが、言葉の力で、様々な問題と立ち向かった彼の楽曲が評価されたことは、理性と感情、寛容と独善に二極化する現在の世界を象徴しているようにも思われます。

どんなに意外に見える事実にも、然るべき理由があるものです。先程お話した二つのサプライズニュースも、当事者の視点で見ていくと、その必然性が見えてくるのかもしれません。これらのニュースは、解決すべき問題が山積していることを物語っているのでしょう。しかも、どれも解決が難しい問題ばかりです。それらの問題を、例えば、グローバリズム対保護主義などという単純な図式で捉えたり、あるいは難民や違法移民の問題とすり替えてしまっているとしたら、問題の本質から目をそらし、新たな分断を招くことにもなりかねません。

今年一年、何が起こるか予想することも難しいのですが、大きな歴史の転換点になることは間違いなさそうです。また、こうした動きは、日本、そして私たちの日々の生活にも様々な影響を与えることでしょう。山積する問題を解決するために、人々の英知が今ほど求められている時代はないのかもしれません。

視野を広げる

上田城の紅葉

上田城の紅葉

真田神社

真田神社

 

先日、会社時代の友人が信州上田を訪ねてくれました。大河ドラマ「真田丸」の影響もあってか、上田城跡をぜひ訪ねたいとのことで、上田城下から塩田平、別所温泉などを案内しました。ちょうど紅葉も見頃で、信州上田をとても気に入ってくれたようでした。私には見慣れた景色でも、都会暮らしの友人には新鮮に映ったのでしょう。盛んにシャッターを切っていました。真田丸大河ドラマ館の入館者も100万人に迫る勢いとのことです。全国から訪れた多くの皆様に、信州上田の良いところを感じて頂けたらと思っています。

私たちは、誰でも自分の世界の中で生きているものです。意識しているかどうかは別として、様々な感情を抱いたりものごとを考えたりする時にも、その人が持っている様々なルールや価値観などが反映されているのでしょう。そもそも、ものごとを見たり感じたりできる範囲、すなわち「視野」も人によってまちまちです。今日の様に複雑な時代では、同じものごとを見ても、人によって真逆の結論にたどりつくことも往々にしてあります。ものごとを多面的に見て、より生産的で納得できる結論を得るためにも、広い「視野」を持つことがますます大切になっていると思います。そこで、今回は「視野」を広げることについてお話してみたいと思います。

私たちは、自分に見えていることが全てだと思いがちです。いくらものごとの全体を見ているつもりでも、実は自分の「視野」からものを見ているに過ぎないのです。もちろん、私も含めて・・・。ですから、一部を見て全体と見誤ったり、自分の間違った思い込みを助長してしまうのでしょう。また、自分に見えているものが他の人には見えていないことや、その逆に自分には見えていないものがまわりの人には良く見えていることもあり、そのことが、様々な行き違いを生じさせる原因になっているのかもしれません。

自分に見えていることが全てだと思っていることが、「視野」を広げることを妨げてしまっているのかもしれません。自分に見えているもの、感じているものがものごとの全てではないことを知ることが、「視野」を広げるための第一歩なのでしょう。今見えている世界の先には、まだ自分が知らない世界が広がっているのです。そして、その中に自分が探しているものや求めているものがあるのかもしれません。もちろん、「視野」を広げることは容易いことではありませんし、時間も必要です。長い間住み慣れた世界を変えることには戸惑いもあるでしょう。急がず、たゆまず歩んでいくことが大切なのです。

私は、人の成長は、その人の「視野」が広がることだと思っています。経験を積むことで見えてくることもたくさんあるでしょうし、学ぶことで自分が知らないことに気づくこともあるでしょう。自分の知らないこと、足りていないことに気づくことは「視野」が広がっていることを示しているのです。自分の知らない世界に踏み込んでみる、そんな日々の心がけが「視野」を広げるきっかけになるのかもしれません。

「視野」が広がることは、自分の世界が広がることなのです。今まで見えていなかったものが見えるようになり、そのことが新しいチャレンジにもつながるものです。このことは、ビジネスでは勿論ですが、なによりも人が幸せに生きていく上で大切なことなのかもしれません。成長を続ける人は、自分の「視野」を広げるすべを経験的に知っているのでしょう。そして、そのための努力を日々続けているのかもしれません。

自分を変える力

あじさい小道

あじさい小道

塩田城址

塩田城址

 

信州上田では、アジサイが見頃です。前山寺から塩田城祉を経て塩野神社へと続く「あじさい小道」では、約3万株のガクアジサイが咲き誇っています。塩田城は、鎌倉時代の塩田北条氏に始まり、戦国時代には、上田原の戦いで武田信玄を苦しめた村上義清の居城ともなりました。素朴な風情に癒される、そんな小道です。

長い社会人生活や人生を送る中で、上司や同僚、そして家族から、自分の足りないところを気づかされることがあります。なかには、厳しい指摘もあるでしょうし、やんわりとした言葉の中に、思いが詰まっていることもあったりもします。皆さんは、そうした時にどのように反応していますか?

人から自分の足りない所を指摘されて、気持ちの良い人はいないでしょう。自信を無くして落ち込んでしまうこともあるでしょうし、「そんなことはない」と否定したり、さらには相手との人間関係が悪くなってしまうこともあるかもしれません。自分を否定されたと思って、自分を取り繕い、守ろうとしてしまうのです。相手にはそんな気持ちは無くて、良かれと思って言ってくれたのかもしれないのです。

一方で、指摘されたことを生かして、自分を高めていける人もいます。自分の足りない所を補い、一歩ずつ成長しているのです。小さな一歩でも、積み重ねて行けば、長い間には大きな違いを生むことになるのかもしれません。

このような違いはどこからくるのでしょうか。よく言われることですが、自分の足りないところに気づくことは、自分の伸びしろを知ることでもあるのです。頭では分かっていても、実際に耳の痛い話をされると、素直には受け入れられないものです。でも、そんな話こそ、「自分づくり」のための大切なメッセージや自分を変えるヒントが隠れているのかもしれません。ですから、耳の痛い話にも心のシャッターを下ろさないで、素直に耳を傾けて、相手の真意を理解しようとすることが大切なのです。

自分を変えたいと思っても、今の自分は長い年月をかけて培われてきたものですから、そう簡単には変えられないかもしれません。でも、あなたが自分の本当の姿に気づき、心から変わりたい、こうなりたい、と思うことができれば、きっと変われるのではないでしょうか。また、「なりたい自分」について、具体的な目標を持つことも大切なことです。最初からあまり欲張らないで、まずは手の届きそうな目標を立ててみることが良いかもしれません。そして、その目標に向かって一歩を踏み出してみるのです。そして、その一歩を習慣になるまでやり続けることです。例えどんなに小さなことでも、自分の努力で自分を変えることができれば、それは一生の宝物になることでしょう。人生は、「自分づくり」の旅なのです。生涯をかけて、一歩ずつ自分にあったペースで自分を磨いていけば、いつかは「なりたい自分」を手に入れることができるのです。

 

企業の不祥事に思う

田園を走る真田丸ラッピングトレイン

田園を走る「真田丸ラッピングトレイン」
-遠く真田の里を望む-

「真田丸ラッピングトレイン」

「真田丸ラッピングトレイン」
-八木沢駅-

 

信州上田の塩田平も田植えが終わり、蛙の合唱がにぎやかです。この春から登場した別所線の「真田丸ラッピングトレイン」と、田植えが終わった田園風景のコントラストもまた風情があります。近頃、塩田の田舎道を走る観光バスが増えてきました。これも「真田丸」効果でしょうか。

このところ、大手電機メーカーの不正会計問題やマンションのくい打ち偽装など、企業による不祥事のニュースが絶えません。コンプライアンスが叫ばれている中で、信じられないような事件ばかりです。自動車業界でも、フォルクスワーゲンの排ガス問題や三菱自動車による燃費データの不正が起きています。三菱自動車は、過去にも重大なリコール隠しがあり、企業の存続自体が危ぶまれたことがありました。その時に行われた社員への聞き取り調査では、「組織の極度な縦割り」や「上を見て発言を控える習慣」などの企業体質の問題が洗い出されていたそうです。もし、こうした問題について真摯な取り組みが行われていれば、今回の燃費不正を防ぐことができたのかもしれません。このことは、組織の風土を変えることの難しさを改めて示しているように思います。

今回の燃費データの不正問題のもうひとつの要因として、熾烈を極める燃費競争があげられます。軽自動車は、維持費などの安さが売り物ですから、燃費性能が売り上げの良し悪しに影響することは間違いありません。今回の燃費不正問題では、対象車種の開発に当たって5回の燃費目標の引き上げがあったと報道されています。他社が次々と最高燃費を更新するのに従って、燃費目標も引き上げられていったようです。経営サイドからの最高燃費実現のチャレンジも厳しく、いつしか目標は実現不可能なものになっていったと思われます。実際に不正を行ったのは実験性能部と言われていますが、本来、燃費性能を向上させるのは開発部門全体の役割のはずです。はたして、本来の燃費向上の努力がどこまで行われたのか、また、燃費目標の実現できないことが、どこまで共有されたのかが、この問題の鍵のように思われます。いずれにしても、熾烈な燃費競争と、組織的な問題が絡み合わさって、結局今回の不正が引き起こされたのでしょう。

自動車業界は燃費競争の他にも、電気自動車や燃料電池車などの技術革新の最中にあります。また、今後は自動運転などへの取り組みも求められており、自動車産業自体が大きな変化の中にあるといってもよいでしょう。結局、今回の問題は社長の引責辞任から、三菱自動車が日産自動車の傘下に入るという、自動車業界の再編へと発展しましたが、これらも必然の流れなのかもしれません。

どんなに大きな企業でも、一度信頼を無くしてしまうと、その存在自体が危うくなる時代です。長い年月をかけて築いてきたお客様の信頼も、あっという間に崩れてしまいます。組織的な問題や不正などが常態化した組織では、あきらめや、無力感などのために、本来行われるべき地道な努力や創造的なチャレンジを生み出す力が奪われてしまうのかもしれません。そうならないためにも、ひとりひとりが持てる力を発揮できる、健全な企業体質を育む努力が欠かせないのです。そのことが、変化の激しい今日、企業が生き残り、成長する鍵になっていると思うのです。

 

ディープラーニングとAI

上田真田まつり 武者行列

上田真田まつり 武者行列

上田真田まつり 真田鉄砲隊演武

上田真田まつり 真田鉄砲隊演武

上田真田まつり 決戦劇

上田真田まつり 決戦劇

4月24日(日)に、「上田真田まつり」が催されました。武者行列には、大河ドラマ「真田丸」で真田昌幸を演じる草刈正雄さんをはじめ出演者の方々も参加して、花を添えていました。また、午後には真田鉄砲隊の演武や第一次上田合戦をモチーフにした決戦劇が行われ、その迫力ある演武に大きな歓声が上がっていました。

先日、グーグルの「アルファ碁」1が世界的な棋士、李九段(韓国)に4勝1敗で勝ったことが報じられました。既にチェスや将棋ではコンピュータが人間に勝っていますが、囲碁はその局面や打つ手の多さから、コンピュータが人間に勝つのにはまだ10年はかかる、と言われていたものです。

「アルファ碁」のソフトウェアには、囲碁のルールが組み込まれていないそうですが、そこが、従来のルールに基づく人工知能(以下AI※2)とは大きく違っているところなのです。「アルファ碁」には、ディープラーニング(深層学習)※3という人間の脳をモデルにした技術が使われています。グーグルでは、このディープラーニングの技術を使って、AIが「ネコの顔」を識別できるようになったそうです。従来は、「ネコの顔」の特徴をコンピュータに教える必要がありましたが、コンピュータ自らが学習してルールを生み出すことを可能にしたのです。「アルファ碁」では、グーグルが持つ大規模なコンピューティング環境を活用して、3000万局という膨大な自己対局をこなしたといいます。仮に毎日100局指したとしても、約800年はかかる膨大な数です。こうした対局から様々な局面を学習し、世界的な棋士にも勝てるだけの実力を身に付けていったのでしょう。ただ、一方で、プロはまず打たない手を打つなど、その弱点も見えてきたようです。コンピュータ自らが学習したルールが人間には見えないだけに、その解析もかなり難しいようです。

 

AIというと、一見私たちには縁遠いようですが、私たちの身の回りには、既にたくさんのAI的なものが存在しています。例えば、身近なスマホの音声認識は、一昔前のものと比べると格段に進歩しています。さらに、Siriなど、アシスタントとしての人格を持っているようにもみえます。また、YouTubeやAmazonなどのサイトでは、閲覧者の好みを先取りした検索が行われていますし、ロボットも、最近ではサービスやコミュニケーションのツールなどに適用分野も広がっています。自動運転もAIの応用分野として、各社がその開発に鎬を削っているのはご存じのとおりです。もちろん、こうしたAIの全てが「アルファ碁」のようにディープラーニングが適用できるわけではありませんが、適材適所でその可能性が模索されはじめています。

今まで、AIはブームと停滞期を繰り返してきました。日本では1980年代に通産省が音頭をとって第五世代コンピュータプロジェクトが行われ、世界に先駆ける試みがなされました。ディープラーニングのもとになっているニューラルネットも、そのころに産声をあげたものです。ところが、残念ながら当時のコンピュータの能力は現在のものとは比べ物になりませんでしたし、ネットワークやクラウドそしてビッグデータなどももちろん存在してはいません。そのために、大きく膨らんだ夢も失望に変わってしまったのです。ところが、これまでの技術の進歩によって、ようやくAIを実用化するための基盤が揃ってきたように思われます。Androidの生みの親アンディ・ルービン氏も、「アルファ碁」は「AIの潜在能力のごく一部」に過ぎず、今後さらにその応用が加速するといっています。また、「クラウドコンピューティングこそAIの頭脳であり故郷」だとも言っています。

今後は、ニューラルネット専用のチップや学習機能のハードウェア化なども進み、新しいインフラであるクラウドコンピューティングやビッグデータなどがAIを支える基盤になることでしょう。サイバー空間の安全対策やセキュリティ問題などの課題もありますが、AIがこれからの世界を変える力になることはどうやら間違いなさそうです。AIを救世主にできるのか、それとも悪魔の使いにしてしまうのか、いずれにしても、私たち人類の「考える力」が試されそうです。

 

※1 「アルファ碁」・・・グーグル傘下のディープマインド社が開発した人工知能(AI)

※2 AI・・・Artificial Intelligence(人工知能)の略

※3 ディープラーニング(深層学習)・・・機械学習の手法のひとつ。多層化されたニューラルネットから構成されており、マシンが学習データから自動的に特徴やルールを抽出する。

以下の文献を参考にさせていただきました。

日経ビジネスONLINE 「AIの「人間超え」、その時トップ囲碁棋士は」 高尾紳路 (日経BP社) 2016/3/19