そして世界は動いている

朝日と別所線

朝日を浴びて走る別所線

 

新しい年、2017年がスタートしました。お正月三が日、信州上田は、お天気にも恵まれ、穏やかなお正月を迎えました。

昨年は、信州上田は大河ドラマ「真田丸」一色の年でしたが、世界に目を転じると、世界中を驚かせるニュースが駆け巡った一年でした。大方の予想に反してイギリスは国民投票でEUからの離脱を決め、アメリカ大統領選挙では、トランプ候補が45代目の大統領に当選しました。これらのニュースは、今までの世界秩序の大きな変貌を予感させるもので、多くの皆さんが漠然とした不安の中で新年を迎えられたのではないでしょうか。

言うまでもなく、EU(ヨーロッパ連合)は、二度の世界大戦で荒廃したヨーロッパを復興し、平和を実現するために生まれたものです。EUの前身EC(欧州共同体)は、当初6ヶ国でスタートしましたが、現在は、28の国々が加盟しています。このEUから、しかも大きな影響力を持つイギリスが離脱するというのですから、ただ事ではありません。今回のイギリス離脱の直接の引き金は、ヨーロッパ各地で続発するイスラム国のテロや多数の難民の流入と言われていますが、どうもそれだけではないようです。加盟各国の自主性とEUの権限の優劣の問題、言い換えれば、加盟国のアイデンティティの問題や、EUに対する不平等感、さらには改善されない高い失業率(EU平均10%)への不満など、以前から。EUに対する不信感も根強く存在しているのです。それにしても、繁栄と平和を実現するために、ヨーロッパから国境を無くすという壮大な夢が、結果的にテロの拡散を招いてしまったことは、残念な皮肉です。

トランプ大統領の誕生も、大方の予想を裏切るものでした。予備選挙中から、その品性を疑いたくなるような暴言に、多くのアメリカ国民が眉をひそめているとの論調がメディアで伝えられていました。ところが蓋をあけてみると、予備選挙で共和党候補になり、さらには本選挙でも勝利を収めたのです。そのことは、実はトランプ候補が言っていたことには(その全てではないにしても)、多くの国民の本音も含まれていたのかもしれません。工場が海外に移転したために、職を失い、賃金の低下に苦しむ人々(特に白人の中産階級と言われています)の不満が渦巻いていることも確かでしょう。さらに、頻発するテロや不法移民の問題も、現状への不安や不満を後押ししていると思われます。これらの問題を単純化して攻撃的な言葉で喝破し、感情に訴えたトランプ候補への期待が、票につながったのかもしれません。

ただ、トランプ大統領の誕生が、パンドラの箱をあけてしまったことは確かです。グローバリズムを率先してきたのは他ならぬアメリカですし、ここに来て、マイノリティに対する差別や迫害が増えているとの報道もあります。また、トランプ大統領の誕生は、フランスやイタリア、さらにドイツでのナショナリズムやポピュリズムを勢いづかせています。感情に訴えることは、一歩間違えると感情を煽ることにつながりかねません。多様性を認め、自由と平等、博愛という価値観を持つアメリカはどこへ行ってしまったのか、と思わざるを得ません。

そんな中で、ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したニュースも、世界中を驚かせました。彼の楽曲が文学なのか、そんな議論も起こりましたが、言葉の力で、様々な問題と立ち向かった彼の楽曲が評価されたことは、理性と感情、寛容と独善に二極化する現在の世界を象徴しているようにも思われます。

どんなに意外に見える事実にも、然るべき理由があるものです。先程お話した二つのサプライズニュースも、当事者の視点で見ていくと、その必然性が見えてくるのかもしれません。これらのニュースは、解決すべき問題が山積していることを物語っているのでしょう。しかも、どれも解決が難しい問題ばかりです。それらの問題を、例えば、グローバリズム対保護主義などという単純な図式で捉えたり、あるいは難民や違法移民の問題とすり替えてしまっているとしたら、問題の本質から目をそらし、新たな分断を招くことにもなりかねません。

今年一年、何が起こるか予想することも難しいのですが、大きな歴史の転換点になることは間違いなさそうです。また、こうした動きは、日本、そして私たちの日々の生活にも様々な影響を与えることでしょう。山積する問題を解決するために、人々の英知が今ほど求められている時代はないのかもしれません。

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