考える力の伸ばし方

真田十勇士

真田まつり(真田十勇士)

 

回、考えることの大切さについてお話ししました。考える力は、ヒューマンスキル共通の基盤になるもので、円滑なコミュニケーションを実現したり、様々な問題の解決策を見出したりする際に、とても役に立つものです。今回は、そんな考える力を実践的に身につけ、伸ばすことについて考えてみましょう。 

前回もお話ししましたが、考えることは意識して行っているかどうかは別として、誰でも日々行っていることなのです。でも、いざ改めて自分の考えをまとめようとすると、なかなか思うようにはいかないものです。そんな経験をお持ちの方はたくさんいらっしゃることでしょう。 

考える力を伸ばすためには、日頃から良く考えることにつきます。知識を増やせば、考える力も自ずと伸びていくもの、と思われがちですが、どうも知識を増やすことと、考える力を伸ばすことは違うもののようです。知識を増やすだけでは、考える力は身につかないのです。考える力を伸ばすためには、考えるための練習が必要です。じっくり考えることの積み重ねが、考える力を伸ばしていくのです。 

企業において、社員の考える力を伸ばす機会を作っている例があります。ホンダでは、「ワイガヤ」と呼ばれる泊り込み合宿があるそうですが、そこでは、三日三晩、徹底的な議論が行われるのだそうです。そこでは、新入りの技術者も、「で、あなたはどう思う?」と繰り返し問われ、自分の頭で考えることを訓練されるのだそうです。もちろん、生半可な意見や借り物の考えは通用しません。三日三晩、ほとんど議論漬けなので、三日目ともなると、形式的で通り一遍の議論はなくなり、本音がぶつかり合い、本質にせまる議論になるのだそうです。このように、一見回り道とも思える取り組みが、ホンダの企業文化を支えているのかもしれません。詳しくは、ホンダでエアバックの商品化に携わられた小林三郎氏の参考文献をご覧頂ければと思います。 

もし、あなたの職場に、このような議論や考える訓練の場があれば言うことはありません。また、あなたのまわりの厳しい上司や先輩もこうした訓練の場を提供してくれている、と考えてみたらどうでしょう。いずれにしても、大いに活用してあなたの考える力を鍛えることをお勧めします。もしそんな訓練の場が身近になければ、あなた自身で、考える機会を作ってみると良いでしょう。じっくり考える時間を作ってみるのです。短時間でかまいません。テーマは、あなたの身近な問題や課題など、どんなことでもかまいません。答えを出すことを急がずに、自分の考えを整理するつもりで考えてみましょう。 

自分の考えが少し形になってきたら、自問自答を行って、あなたの考えを育てていきます。例えば、考えの筋道は通っているか?考えは足りているか?なぜ、自分はそう考えるのか、その裏付けはなにか?など、厳しい上司になったつもりで、自分の意見を叩いてみるのです。そして、それらの質問に答えるために、もう一歩考えを深めてみましょう。そうしたら、また叩いてみるのです。このようなプラクティスを繰り返すことで、あなたの考えや思いが少しずつ形を現してくるのです。

 考えることは、様々な試行錯誤を繰り返しながら、自問自答のプロセスを創り出していくことなのです。考えることを通してあなたの自問自答のパターンを増やしていくことが、考える力を伸ばすことにつながるのです。考える力を身に付けるためには少し時間がかかりますが、若い皆さんには十分時間があります。今から、あなたにあったペースで、考えること、自問自答を繰り返していくことが肝心なのです。

  

次の文献を参考にさせていただきました。 

ホンダ イノベーションの神髄        小林三郎 著      (日経BP社)

 

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