信州上田の塩田平も田植えが終わり、蛙の合唱がにぎやかです。この春から登場した別所線の「真田丸ラッピングトレイン」と、田植えが終わった田園風景のコントラストもまた風情があります。近頃、塩田の田舎道を走る観光バスが増えてきました。これも「真田丸」効果でしょうか。
このところ、大手電機メーカーの不正会計問題やマンションのくい打ち偽装など、企業による不祥事のニュースが絶えません。コンプライアンスが叫ばれている中で、信じられないような事件ばかりです。自動車業界でも、フォルクスワーゲンの排ガス問題や三菱自動車による燃費データの不正が起きています。三菱自動車は、過去にも重大なリコール隠しがあり、企業の存続自体が危ぶまれたことがありました。その時に行われた社員への聞き取り調査では、「組織の極度な縦割り」や「上を見て発言を控える習慣」などの企業体質の問題が洗い出されていたそうです。もし、こうした問題について真摯な取り組みが行われていれば、今回の燃費不正を防ぐことができたのかもしれません。このことは、組織の風土を変えることの難しさを改めて示しているように思います。
今回の燃費データの不正問題のもうひとつの要因として、熾烈を極める燃費競争があげられます。軽自動車は、維持費などの安さが売り物ですから、燃費性能が売り上げの良し悪しに影響することは間違いありません。今回の燃費不正問題では、対象車種の開発に当たって5回の燃費目標の引き上げがあったと報道されています。他社が次々と最高燃費を更新するのに従って、燃費目標も引き上げられていったようです。経営サイドからの最高燃費実現のチャレンジも厳しく、いつしか目標は実現不可能なものになっていったと思われます。実際に不正を行ったのは実験性能部と言われていますが、本来、燃費性能を向上させるのは開発部門全体の役割のはずです。はたして、本来の燃費向上の努力がどこまで行われたのか、また、燃費目標の実現できないことが、どこまで共有されたのかが、この問題の鍵のように思われます。いずれにしても、熾烈な燃費競争と、組織的な問題が絡み合わさって、結局今回の不正が引き起こされたのでしょう。
自動車業界は燃費競争の他にも、電気自動車や燃料電池車などの技術革新の最中にあります。また、今後は自動運転などへの取り組みも求められており、自動車産業自体が大きな変化の中にあるといってもよいでしょう。結局、今回の問題は社長の引責辞任から、三菱自動車が日産自動車の傘下に入るという、自動車業界の再編へと発展しましたが、これらも必然の流れなのかもしれません。
どんなに大きな企業でも、一度信頼を無くしてしまうと、その存在自体が危うくなる時代です。長い年月をかけて築いてきたお客様の信頼も、あっという間に崩れてしまいます。組織的な問題や不正などが常態化した組織では、あきらめや、無力感などのために、本来行われるべき地道な努力や創造的なチャレンジを生み出す力が奪われてしまうのかもしれません。そうならないためにも、ひとりひとりが持てる力を発揮できる、健全な企業体質を育む努力が欠かせないのです。そのことが、変化の激しい今日、企業が生き残り、成長する鍵になっていると思うのです。