城下駅まで復旧した別所線
別所温泉駅の「折り紙アート」
台風19号は、長野県をはじめ、各地に甚大な被害をもたらしました。この場をお借りして、被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
長野県で特に被害が大きかったのは、千曲川と千曲川に流れ込む数多くの支流の流域です。山間地が多い長野県ですので、山あいの支流や沢などでも、多くの被害が発生しました。千曲川の決壊は、過去に何度となく繰り返されていたとはいえ、未だに自然の力の前には人の力が及ばないことを思い知らされます。
ここ上田でも、大きな被害がありました。雨が少なく、ため池が多いことで有名な塩田平でも、尋常ではない雨が降りました。千曲川が一部越水し、堤防の損傷によって別所線の赤い鉄橋が落ちてしまったことは、ご存じのとおりです。このことは、とてもショッキングな出来事でした。鉄橋の近くに架かる上田橋では、たくさんの人が、茫然と鉄橋を見つめたり、カメラを向けていました。別所線は上田と別所温泉を結んでいますが、その途中には大学や短大もあり、上田への通勤、通学の足としても利用されていますので、その影響はとても大きいのです。
私が研修を行っている会社でも、何名かの方が今回の災害で被害にあわれました。千曲川の決壊現場の近くで被害にあわれた方もいらっしゃいました。災害があって数日後、会社には募金箱が用意されたとのことです。しかも、その募金箱を用意したのは、長年働いているパートさんで、誰に言われたのでもなく、自発的に用意されたのだそうです。募金箱には多くの募金が集まり、外国から働きに来ている方も、慎ましい生活費の中から募金をしてくれたそうです。このことは、私が研修でお邪魔した折にお聞きしたのですが、何か温かいものを感じました。こうして集まった募金は、被害にあわれた方への何よりの励ましであり、贈り物だと思います。
また、今回の災害でも、多くのボランティアの皆さんが活躍されています。ボランティアの皆さんの力は復興の原動力として、被災された方々をはじめ、多くの皆さんから感謝されています。善意の人の力や温かさを感じずにはおられません。災害は多くの悲しみと苦難をもたらしますが、一方で私たちがとかく忘れがちな善意の心や人の温かさを呼び覚ましてくれます。
別所線も、城下駅(上田駅の次の駅)から下之郷駅までが復旧し、城下駅から別所温泉駅までつながりました。また、本数も災害前の8割にまで回復しています。城下駅から上田駅までは代行バスですが、それでも以前に比べると随分便利になりました。赤い鉄橋の復旧にはまだ時間がかかりそうですが、各方面からの支援も集まり始めています。一日も早く復旧して、また上田駅の達郎アバターの出発チャイム*を聞くことができることを願うばかりです。
*:「サマーウォーズ」主題歌「僕らの夏の夢」 作詞・作曲 山下達郎
別所線上田駅
上田映劇
信州上田での生活も一年になりました。そこで今回は、この一年を振り返って、信州上田の良いところをいくつかご紹介したいと思います。
最初に紹介させていただくのは、上田電鉄別所線です。上田駅から別所温泉までの11.6kmを走っている電車で、「丸窓電車」でおなじみの方もいらっしゃることと思います。このコラムでも、何度か写真を掲載しています。もともとは別所温泉への旅行客のためのものでしたが、現在は、沿線にある長野大学の学生さんも利用しています。その昔、映画「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」で寅さんやさくらが乗っていましたし、最近では、「サマーウォーズ」にも登場しました。
上田駅を電車が発車する時には、映画「サマーウォーズ」の主題歌、山下達郎の「僕らの夏の夢」が流れます。達郎ファンの私には、これだけでも十分うれしいのですが、別所線でのひと時は、ほんとうに贅沢な時間です。時間がゆっくり流れていくのが体感できるような、そんなひと時を過ごすことができます。都会暮らしに疲れた時や、一人旅にはおススメです。生島足島神社のある下之郷駅を過ぎると、信州の鎌倉、塩田です。塩田町駅からは、無言館や前山寺などを回るシャトルバスが出ています。無言館には、戦没画学生の遺作が展示されています。中野駅から舞田駅あたりでは、塩田平や里山の景色が一望できます。先日も、別所温泉のお客様でしょうか、車窓からの風景をカメラに収めていました。終点の別所温泉駅では、昭和レトロな駅舎が迎えてくれます。
次にご紹介したいのは、上田の市街地にある「上田映劇」です。上田駅から駅前の通りをまっすぐのぼり、海野町の手前の路地を入って少し行ったところにあります。「上田映劇」は、映画「青天の霹靂」のロケが行われた所です。「上田映劇」では、ロケが行われた浅草「雷門ホール」の姿を残しています。「青天の霹靂」に主演した大泉洋さんは、テレビやラジオで信州上田を絶賛しています。You Tubeでは、「大泉洋 上田」で検索することができます。
信州上田は、映画のロケ地としても有名なところで、先ほど紹介した「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」や「サマーウォーズ」をはじめ、「博士の愛した数式」や中居正広さんが主演した「私は貝になりたい」など、今までに150本もの映画のロケが行われたそうです。※)また、今年で18回になる「うえだ城下町映画祭」がこの11月29日(土)、30日(日)に行われます。「青天の霹靂」の監督で、出演もされた劇団ひとりさんがゲストとして来るそうです。
昨年、上田に移って間もない頃、武石の新そば祭りに行きました。山あいにも関わらず、たくさんの人が集まっていました。武石で採れたそば粉で打った新そばは、それはおいしくて、一時間近く並んだかいがありました。戸隠そばや善光寺そばは全国的にも有名ですが、上田のそばもほんとうにおいしいですよ。池波正太郎さんが愛した「刀屋」や、もりが多い「草笛」など、お昼時は、まず行列を覚悟する必要があります。個人的には、青木線沿いの「車屋」の、かき揚げが乗ったざるそばがおすすめです。今年も武石はもちろん、信州の各地で新そばまつりが行われます。なお、今年の武石のそば祭りは、11月15日(土)、16日(日)の両日に開催されるそうです。
その他にも、信州上田で行われる様々なお祭りや風情あふれる柳町通りをはじめ、八千穂高原の日本一の白樺原生林やつけば小屋でのアユ料理など、信州上田でのこの一年には、すばらしい出会いが沢山ありました。生まれも育ちも信州の私ですが、しばらくぶりの信州は新鮮です。ちょうど、東京銀座に長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」がオープンしましたが、これを機会に多くの人が、長野県そして信州上田の魅力を共有していただければと思います。私も、この一年の出会いに感謝しながら、また新しい出会いを楽しみにしたいと思っています。
※) 「信州上田フィルムコミッション」のホームページ(http://www.ueda-cb.gr.jp/fc/)より