知恵を生む力とヒューマンスキル(1)

上田駅前イルミネーション

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この314日に、北陸新幹線の長野、金沢間が開業しました。関東と北陸が短時間で結ばれ、信州から北陸にも一時間ほどで行くことができるようになりました。これを機会に、多くの皆様が信州や上田の魅力に触れることを期待したいと思います。

 前回は、知識を獲得することと、知恵(智恵)を生み出す力を身につけることは別のこと、とお話ししました。一般に、知識を得れば、知恵を生み出す力も自ずと身に付いてくると思われがちですが、そうではないのです。そうした誤解が強いために、私たちの身の回りで発生する様々な問題がなかなか解決されない一因になっているのかもしれません。では、知恵や工夫を生み出す力を身に付け、問題の解決策を見出すためには、どうしたら良いのでしょうか。私は、知恵や工夫の源泉は、皆さんのヒューマンスキルの中に存在すると考えています。

 問題解決ついて言えば、世の中には数多くの問題解決手法がありますから、それらを駆使すればたくさんの問題が容易に解決できそうなものです。ところが、現実はそうではありません。それらの手法は特定の分野にしか適用できなかったり、そのままでは現実の問題に当てはめることが難しかったりするものです。また、問題解決に取り組む際に、その前段階のところで躓いてしまうことも多いものです。問題が起きていても、その発生に気づかない。問題に気づいても、あいまいな情報や思い込みのために、解決すべき問題を取り違えてしまう。また、問題の一部だけを見て問題の原因を見誤ってしまい、もぐらたたき的な問題解決に終始することも良くあります。冷静な時ならまだしも、問題が発生すると、誰でも焦ってますます悪循環に陥ってしまうものです。そんなことが重なってくると、つい問題解決から逃げ腰になったり、諦めが先に立つようになってしまいます。この様に、実際の問題解決においては、ものの見方や考え方、問題解決に取り組む姿勢など、人的要素が問題の解決や知恵を出すことに大きな影響を与えているのです。また、問題解決において重要な合意形成のプロセスも、たいへん人間的なものです。これらは、問題解決の例ですが、コミュニケーションやものごとを計画的に進める力などにおいても、同様のことが言えると思います。

 私は、正しい問題解決や良好なコミュニケーションを実現するためには、人的要素や心理的な要素、ヒューマンスキルにもっと注目し、理解を深める必要があると思っています。問題解決を取り巻く様々な悪循環を断って、冷静に問題を受け止め、その解決プロセスに従って段階を踏んでいけば、多くの問題や課題は思われているよりも容易に解決することができるのです。

 一般的に、ヒューマンスキルはよく「人間力」とも言われていますが、その提唱者であるハーバード大学のロバート・カッツは、マネージャに求められる能力としてヒューマンスキルをはじめ、以下のスキルを定義しています。

  ・ヒューマンスキル・・・対人関係能力とも言われる。業務を遂行している上で他者との良好な関係を形成する力。具体的にはコミュニケーション力、ネゴシエーション力など。

 ・テクニカルスキル・・・職務遂行能力とも言われる。職務を遂行する上で必要となる専門知識や業務知識、業務処理能力。

 ・コンセプチュアルスキル・・・概念化能力とも言われる。抽象的な考えや物事の大枠を理解する力。具体的には、論理的思考力、問題解決力、応用力など。

 これらの3つのスキルが互いに連携し合うことで、与えられた業務を円滑にこなすことができると言われており、この3つのスキルともに大切なものです。そうは言っても、テクニカルスキルは日々の仕事を行うために必要になる業務知識やノウハウなど、仕事に直接効いてくるものですから、ついそこに目が向き、他のスキルは軽視されがちです。

 コンセプチュアルスキルという言葉は、聞きなれない方もいらっしゃると思いますが、上位のマネージャにとって必要なものです。ビジネススキルとも呼ばれ、ビジネスの複雑化、高度化に伴って、新しいスキルも様々なものが定義されています。問題解決力や計画力などもこのスキルに含まれるものと言われています。このスキルは、ビジネスパーソンとして成長するに従って、よりコンセプチュアルなスキル、高次なスキルとして進化していくものなのです。

 ヒューマンスキルは、今日では、全てのビジネスパーソンに必要なものと言われています。また、近年、就職活動において重視されるスキルとして注目を集めています。ヒューマンスキルは、他者との良好な人間関係を築くコミュニケーション能力やロジカルシンキング(論理的思考)などの基本的なスキルをはじめ、困難な課題に立ち向かう積極性や常に自分を高める向上心、変化に対応する力やチームを統率するリーダーシップなどたいへん幅広い意味で用いられています。ところが、その具体的なイメージや育成に関しては、あまり明確になっていません。先ほど述べたように、問題解決においても人的要素が大きな影響を与えていますから、ヒューマンスキルについて理解を深め、開発することができれば、問題解決力を身に付けることにつながるはずです。また、テクニカルスキルとヒューマンスキルを連携させることで、業務や職場を改善するための知恵や工夫を生み出すこともできるのです。ヒューマンスキルは、その人が長年培ってきた業務ノウハウや経験、その人が持つ人格や思いなどに根ざしているものですから、その潜在力は計り知れません。そうした潜在力に気づき、引出すことで、知恵や工夫を生み出すことができると思うのです。

 次回も、ひき続きヒューマンスキルについて考えてみたいと思います。

 

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